研究課題
学内の研究分担者と,症例の選定基準やインフォームドコンセントの取得,術前生検標本及び手術検体からの凍結標本採取に関するフロー,マニュアルを作成し,症例の選定,登録が確実かつ速やかに行われる体制を整えた.2018年度に研究施設(東京医科大学病院)で術前化学療法後に手術が施行された膵癌症例は,19例であった.男女比は9:10で,年齢分布は44歳~77歳 (平均66.1歳),腫瘍の局在は頭部が13例,体尾部が6例であった.19例中,14例 (73.7%)では術前に超音波内視鏡ガイド下の生検(Endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration, EUS-FNA)が行われており,13例において膵癌の確定診断がついていた.Gemcitabine + nab-Paclitaxelの術前化学療法施行後に膵切除が行われ,切除材料における治療効果判定 (膵癌取扱い規約第7版に基づく)は,Grade 1a (癌の推定残存率が90%以上) が9例,Grade 1b (同 50%以上かつ90%未満) が7例,Grade 2 (同 10%以上かつ50%未満) が1例,Grade 3 (同 10%未満) が0例,Grade 4 (生存し得ると判断される癌細胞を認めない) が2例であった.多くは"治療効果が軽度の効果あるいは無効 (Grade 1)"であったが,"完全奏功 (Grade 4)"例もみられる結果となった.以上の所見からは,術前治療施行例の多くにおいて術前生検標本からも癌のサンプルの採取が可能,すなわち同一症例において化学療法の施行前後の癌組織で遺伝子発現の比較検討が可能であることが分かった.また,治療効果には症例ごとにばらつきがあり,各 Grade 間においても遺伝子発現の変化に関しての比較が出来る可能性があることが示唆された.
3: やや遅れている
学内での倫理審査の手続き,承認に時間がかかってしまった.
研究実績概要の部に示したように,当院での術前化学療法施行例は非常に豊富であり,その多くで術前の生検包本による癌との確定診断が付いている.また手術検体における治療効果判定も適切に施行出来ている.今後は症例の登録,集積は順調に進み,研究期間中に予定症例数10例の解析を終了することが見込まれる.
本年度に予定していた術前生検サンプルを用いたmRNAの網羅的解析まで研究が進まなかったため次年度使用顎が生じた.次年度は,本年度に予定していた症例に加え今後加わる新規症例を併せて上記解析を行うために使用する計画である.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件)
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