研究課題/領域番号 |
18K07029
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
石塚 喜世伸 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80596560)
|
研究分担者 |
張田 豊 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10451866)
服部 元史 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50192274)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 巣状分節性糸球体硬化症 / 腎移植後再発 / 糸球体上皮細胞足突起消失 / 病因分類による層別化 |
研究実績の概要 |
本研究は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の、臨床情報・病理情報・遺伝子検査結果を統合し、FSGSの病因に基づいた一次性および二次性の層別化方法の確立を目指したものである。 平成30年度は、当科におけるFSGSで腎移植を施行した症例のうち、移植後再発をきたし、かつFSGSの病原性を有する遺伝子変異を有さなかった確実な一次性FSGS症例と、前述の遺伝子変異を有し、かつ移植後再発をきたさず確実な二次性FSGS症例をそれぞれ抽出し、両群のFSGSとの診断を受けた自己腎生検の病理所見を比較した。その中で、両群の電顕画像において、糸球体上皮細胞の足突起消失の程度を、電顕画像上の全係蹄長における足突起消失部分に覆われた係蹄長の割合を測定することで定量化し比較した。腎生検時の尿蛋白量には有意差を認めなかったが、足突起消失の割合(FPE ratio)は一次性FSGS群では80%以上であったのに対し、二次性FSGS群では80%未満であった。このことから一次性FSGSと二次性FSGSは、FSGSと診断された自己腎生検の段階で判別できる可能性が示された。また、両群の臨床データを比較すると、浮腫をきたさなかった症例及びステロイド初期治療無効例は全て二次性FSGS群に含まれていた。さらに、両群ともに血清総蛋白値が6.0 g/dl以下となる低蛋白血症をきたしている症例を含んでいたが、血清総蛋白値 3.9 g/dlで両群を判別することができた。この新しい知見は2018年アメリカ腎臓学会、2018年日本小児腎臓病学会学術集会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の、臨床情報・病理情報・遺伝子検査結果を統合し、FSGSの病因に基づいた一次性および二次性の層別化方法の確立を目指した本研究のうち、まず病理情報及び臨床情報に基づいて、移植後再発をきたし、かつFSGSの病原性を有する遺伝子変異を有さなかった確実な一次性FSGS症例と、前述の遺伝子変異を有し、かつ移植後再発をきたさず確実な二次性FSGS症例の比較で、両群の判別及び層別化に成功した。これは、(Ⅰ)網羅的遺伝子解析の施行、(Ⅱ)糸球体上皮細胞の細胞数及び足突起形態変化の定量的評価、(Ⅲ)特異的抗体を用いた糸球体上皮細胞の分子学的な変化の傾向免疫染色による定量的評価、(Ⅳ)移植前の治療に対する臨床情報の比較、によってもたらされる移植後再発に関連する分子の抽出を目指した本研究の(Ⅱ)に該当し、かつFSGSの層別化の実現可能性を示すことができたからである。
|
今後の研究の推進方策 |
FSGSの腎移植において、患者血漿暴露前と暴露1時間後の移植腎生検病理組織を比較することで、腎移植後再発例と非再発例における糸球体上皮細胞構成因子の変化の違いを抽出する。またFSGS症例の網羅的遺伝子検査を施行し、FSGSとして病原性を有する遺伝子変異の有無を検討する。最終的に臨床・病理・遺伝子情報を統合し、一次性および二次性FSGSの層別化を目指す予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究におけるFSGS患者の全エクソーム解析の費用、および病理組織免疫蛍光染色における一次および二次抗体購入の費用と免疫蛍光染色に要する諸費用である。
|