研究課題/領域番号 |
18K07032
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
矢野 博久 久留米大学, 医学部, 教授 (40220206)
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研究分担者 |
秋葉 純 久留米大学, 大学病院, 教授 (00341305)
小笠原 幸子 久留米大学, 医学部, 講師 (40258405)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 混合型肝癌 / 肝ステム像 / 中間細胞型 / マイクロアレイ / 免疫染色 / FFPE / 肝細胞癌 / 胆管細胞癌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、SCF亜型の中間細胞型及び、細胆管型の組織発生解明や組織診断補助に有用な分子の同定を試みる事である。これまでの研究実績としては、外科切除されたSCF亜型の中間細胞型(6例)、細胆管型組織(3例)、肝細胞癌組織(5例)、肝内胆管癌組織(5例)およびこれら4種類の腫瘍周囲の非腫瘍部組織(全部で19例)からRNAを採取し、47,000遺伝子の発現をマイクロアレイを使用して網羅的に検討し(1)腫瘍と非腫瘍部組織の遺伝子発現を比較した。次に(2)中間細胞型において、肝細胞癌や肝内胆管癌よりも、腫瘍部組織で遺伝子発現が増加、あるいは低下している遺伝子を検討した。その後(3)同定した分子の発現を35例の中間細胞型組織、60例の肝細胞癌組織、25例の肝内胆管癌組織における蛋白発現を免疫染色法により検討した。陽性細胞の割合で、0-5までの6段階評価でスコアリングを行った。その結果(1)中間細胞型の腫瘍の遺伝子発現パターンは、肝細胞癌よりも肝内胆管癌に類似していた。(2)中間細胞型において、肝細胞癌や胆管癌と発現が異なる91の遺伝子を同定した。その中でもっとも遺伝子発現の差が大きかったのは、Malic enzyme 1 (ME1)であった。(3)使用した症例の臨床病理学的特徴としては、中間細胞型は、肝細胞癌に比べ、有意にウイルス感染率が低かった。また、非腫瘍部の線維化の程度は、肝内胆管癌に比べ中間細胞型が有意に高度であった。また、予後に関しては、5年生存率は、中間細胞型が49.5%、肝細胞癌が74.8%、肝内胆管癌が37.9%で、中間細胞型は肝細胞癌に比べ有意に予後不良であった。免疫染色では、ME1のスコア1以上(陽性細胞あり)の割合は中間細胞型で77%と最も高かったが、肝細胞癌でも61%で、胆管細胞癌で最も低く28%であった。現在、他のマーカーの発現の検討も実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に計画していた、外科切除組織(SCF亜型の中間細胞型、細胆管型組織、肝細胞癌組織、肝内胆管癌組織およびこれら4種類の腫瘍周囲の非腫瘍部組織)からのRNAの抽出とマイクロアレイ解析が予定通り行われている。また、30年度から31年度にかけて予定していた同定された分子の免疫染色も実施していることから、概ね予定通り研究が実施されているといえる。しかし、SCF亜型の細胆管型の解析や混合型肝癌細胞株を使用した機能解析などは行えておらず、今後、それらの関しても検討する必要がある。また、中間細胞型の腫瘍で特異的に発現が異なる分子についても、免疫染色で全ての検討ができていないため今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
1.混合型肝癌の肝ステム細胞像を伴う(SCF)亜型のうち中間細胞型の解析を中心に行ったが、今後、細胆管型の解析も同様に進める。 2.マイクロアレイでは、中間細胞型において、肝細胞癌や胆管癌と発現が異なる91の遺伝子を同定し、その中でもっとも遺伝子発現の差が大きかったME1の解析のみしか行っていないので、順次解析を行う。 3.中間細胞型のヒトの組織の解析は行ったが、当施設で独自に樹立した中間細胞型の癌細胞株の遺伝子発現解析はまだ行っていないために組織との生合成をチェックして、更に、細胞株を用いて遺伝子の機能解析などを行う。
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