研究課題/領域番号 |
18K07032
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
矢野 博久 久留米大学, 医学部, 教授 (40220206)
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研究分担者 |
秋葉 純 久留米大学, 大学病院, 教授 (00341305)
小笠原 幸子 久留米大学, 医学部, 講師 (40258405)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 混合型肝癌 / 中間細胞亜型 / 免疫染色 / ケラチン7 / ケラチン19 / HepPar-1 / 組織診断 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2010年消化器疾患WHO分類に記載されている混合型肝癌の肝ステム細胞像を伴う亜型の中間細胞亜型及び細胆管亜型の組織発生解明や組織診断補助に有用な分子の同定を試みることである。昨年度までの検討で、肝細胞癌、肝内胆管癌、中間細胞亜型、細胆管亜型およびそれらの非腫瘍部肝組織の網羅的な遺伝子解析により、中間細胞亜型の腫瘍部において特異的に発現亢進もしくは低下している91個の遺伝子を同定した。このうち最も発現が亢進している遺伝子のMalic enzyme 1 (ME1)の蛋白発現を中間細胞亜型、肝細胞癌、肝内胆管癌で免疫染色法により検討したところ、ME1陽性率は中間細胞型、肝細胞癌、肝内胆管癌でそれぞれ77.1%、61.7%、28.0%であった。陽性細胞の割合を0~5の6段階でスコアリングを行い、既存の肝細胞マーカー(HepPar-1)、胆管細胞マーカー(K7、K19)とME1それぞれのスコアを組み合わせることで高い感度(88.6%)、特異度(88.0%)で中間細胞型を診断できることが判明し報告した。当講座で保有している中間細胞亜型、肝細胞癌、肝内胆管癌の細胞株でWestern blottingを行うと、中間細胞亜型、肝細胞癌でME1発現亢進がみられ、肝内胆管癌では亢進は認めず、遺伝子解析や免疫組織化学の結果とも一致していた。発現が亢進していたCPDとDNMT1の2つの分子の発現も中間細胞亜型、肝細胞癌、肝内胆管癌で免疫染色により検討を行ったが、中間細胞亜型での発現亢進は認められず、遺伝子発現と蛋白発現に差異がみられた。なお、肝細胞癌では腫瘍部でCPDの高発現が認められ、新たな肝細胞癌の組織腫瘍マーカーとなる可能性があり検討を継続している。また、細胆管亜型の診断に関する組織腫瘍マーカー検索に関する検討も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
31年度に予定していた肝細胞癌、肝内胆管癌、中間細胞亜型、細胆管亜型のマイクロアレイ解析で発現亢進あるいは低下している分子の免疫染色は順調に行われている。発現が最も亢進していたME1とともに、ケラチン7や19,HepPar-1の免疫染色を行うことにより、中間細胞亜型の診断のアルゴリズムを作成することが出来たことから、概ね予定通り研究が実施されているといえる。細胆管亜型の診断マーカーの同定に関しては、マイクロアレイによる遺伝子発現の検討は行っているが、まだ、免疫染色を行う段階まで行っていないので今後の課題である。 また、混合型肝癌細胞株の遺伝子発現のマイクロアレイ解析も行ったが、まだ解析が出来ておらず、今後、解析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子解析で細胆管亜型に特異的に発現亢進している遺伝子としてSMAD family member 6 (SMAD6)、AT rich interactive domain 2 (ARID2)、small nuclear ribonucleoprotein polypeptide N (SNRPN)などが同定され、これらに関して今後、免疫組織化学的な検討も行う予定である。また、混合型肝癌細胞株の遺伝子発現のマイクロアレイ解析も行ったが、まだ解析が出来ておらず、今後、解析が必要である。
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