ヒト腫瘍組織の物性を規定する病理像と分子機構の解明

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 18K07035
• 研究機関: 国立研究開発法人国立がん研究センター
• 研究代表者: 小嶋 基寛 国立研究開発法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (30338470)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 癌微小環境 / メカノトランスダクション / 癌関連線維芽細胞 / Transgelin

研究実績の概要

本研究の目的は、#1 Transgelinの免疫組織学的検討、#2 ヒト大腸癌の硬さと transgelin発現の検討、#3 線維芽細胞における transgelinの硬さ形成と腫瘍進展に与える生物学的機能解析を行い、transgelin発現を介して生じる腫瘍組織の硬さが、癌細胞に与える影響を検討することである。
今年度は、#2に関して前向きに情報を収集する環境の構築を行った。#3においては in vitroで線維芽細胞における transgelin発現の機能解析を行った。
#1 Transgelinの免疫組織学的検討:　大腸におけるTransgelinの発現が、癌間質に有意であり、その発現が予後因子であることを示した。本年度までに論文化が終了している。
#2 ヒト大腸癌の硬さと transgelin発現の検討: 肝細胞癌、転移性肝癌、膵臓癌において、硬さ情報を有する症例の試料蓄積を行い、研究環境を確立した。今後、膵臓癌における発現解析を行い、硬さ情報との相関を検討することで、大腸癌における検討の feasibilityが判明する。
#3 線維芽細胞における transgelinの硬さ形成と腫瘍進展に与える生物学的機能解析: transgelinノックダウン線維芽細胞を確立し、癌細胞培養上清で刺激する実験を行い、コントロールと比較した。線維芽細胞を刺激した際に生じる形態変化、アクチン、コラーゲン発現の上昇が transgelinノックダウンにより低下することから、transgelinが線維芽細胞の活性化に関わることを示した。今後transgelinノックダウン線維芽細胞をがん培養上清で刺激することにより、分子機構の全体を把握する予定である。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、#1 Transgelinの免疫組織学的検討、#2 ヒト大腸癌の硬さと transgelin発現の検討、#3 線維芽細胞における transgelinの硬さ形成と腫瘍進展に与える生物学的機能解析を行い、transgelin発現を介して生じる腫瘍組織の硬さが、癌細胞に与える影響を検討することである。
#1　大腸におけるTransgelinの発現が、癌間質に有意であり、その発現が予後因子であることを示した。本年度までに論文化が終了しており、予定通りである。
#2 ヒト大腸癌の硬さと transgelin発現の検討: 予定通り、大腸癌の硬さ情報を有する症例の試料を蓄積する研究環境を確立した。今後、膵臓癌における発現解析を行い、硬さ情報との相関を検討することで、大腸癌における検討の feasibilityが判明すると考えている。
#3 線維芽細胞における transgelinの硬さ形成と腫瘍進展に与える生物学的機能解析: 昨年度までにtransgelinノックダウン線維芽細胞を確立した。今年度はtransgelinノックダウン線維芽細胞を癌細胞培養上清で刺激することでtransgelinが線維芽細胞の活性化に関わることを示した。今後は網羅解析を行う事で 線維芽細胞活性化におけるtransgelinの役割を俯瞰的に検討する予定である。

今後の研究の推進方策

研究の目的は、#1 Transgelinの免疫組織学的検討、#2 ヒト大腸癌の硬さと transgelin発現の検討、#3 線維芽細胞における transgelinの硬さ形成と腫瘍進展に与える生物学的機能解析を行い、transgelin発現を介して生じる腫瘍組織の硬さが、癌細胞に与える影響を検討することであり、今年度までおおむね予定通り研究が遂行されている。来年度はヒト腫瘍組織における硬さとtransgelinを含めた発現解析を行い、transgelinノックダウン線維芽細胞を刺激した際の発現をコントロールと比較することで、ヒト腫瘍組織の物性を規定する病理像と分子機構の解明研究の総括につなげたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

出張の中止が生じたため。

研究成果

• [国際共同研究] Moffitt Cancer Center/Tulane University School of Medicine(米国)
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: Moffitt Cancer Center/Tulane University School of Medicine
• [雑誌論文] Safety of endoscopic procedures with monopolar versus bipolar instruments in an ex vivo porcine model. (2020)
  • 著者名/発表者名: Shinmura K, Ikematsu H, Kojima M, Nakamura H, Osera S, Yoda Y, Hori K, Oono Y, Ochiai A, Yano T.
  • 雑誌名: BMC Gastroenterol. 巻: 20 ページ: 27
  • DOI: 10.1186/s12876-020-1176-9.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The potential application of PD-1 blockade therapy for early-stage biliary tract cancer. (2020)
  • 著者名/発表者名: Umemoto K, Togashi Y, Arai Y, Nakamura H, Takahashi S, Tanegashima T, Kato M, Nishikawa T, Sugiyama D, Kojima M, Gotohda N, Kuwata T, Ikeda M, Shibata T, Nishikawa H.
  • 雑誌名: Int Immunol. 巻: 32 ページ: 273-281
  • DOI: 10.1093/intimm/dxz080.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Ki67 expression and localization of T cells after neoadjuvant therapies as reliable predictive markers in rectal cancer. (2020)
  • 著者名/発表者名: Imaizumi K, Suzuki T, Kojima M, Shimomura M, Sakuyama N, Tsukada Y, Sasaki T, Nishizawa Y, Taketomi A, Ito M, Nakatsura T.
  • 雑誌名: Cancer Sci. 巻: 111 ページ: 23-35
  • DOI: 10.1111/cas.14223.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Area of residual tumor (ART) can predict prognosis after post neoadjuvant therapy resection for pancreatic ductal adenocarcinoma. (2019)
  • 著者名/発表者名: Okubo S, Kojima M, Matsuda Y, Hioki M, Shimizu Y, Toyama H, Morinaga S,
  • 雑誌名: Sci Rep. 巻: 9 ページ: 17145
  • DOI: 10.1038/s41598-019-53801-2.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Proportion of goblet cell is associated with malignant potential in invasive mucinous adenocarcinoma of the lung. (2019)
  • 著者名/発表者名: Oki T, Aokage K, Ueda T, Sugano M, Tane K, Miyoshi T, Kojima M, Fujii S, Kuwata T, Ochiai A, Funai K, Tsuboi M, Ishii G.
  • 雑誌名: Pathol Int. 巻: 69 ページ: 526-535
  • DOI: 10.1111/pin.12853.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Dexamethasone Increases Cisplatin-Loaded Nanocarrier Delivery and Efficacy in Metastatic Breast Cancer by Normalizing the Tumor Microenvironment. (2019)
  • 著者名/発表者名: Martin JD, Panagi M, Wang C, Khan TT, Martin MR, Voutouri C, Toh K, Papageorgis P, Mpekris F, Polydorou C, Ishii G, Takahashi S, Gotohda N, Suzuki T, Wilhelm ME, Melo VA, Quader S, Norimatsu J, Lanning RM, Kojima M, Stuber MD, Stylianopoulos T, Kataoka K, Cabral H.
  • 雑誌名: ACS Nano. 巻: 13 ページ: 6396-6408
  • DOI: 10.1021/acsnano.8b07865.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Growth patterns of small peripheral squamous cell carcinoma of the lung and their impacts on (2019)
  • 著者名/発表者名: Omori T, Aokage K, Nakamura H, Katsumata S, Miyoshi T, Sugano M, Kojima M, Fujii S, Kuwata T, Ochiai A, Ikeda N, Tsuboi M, Ishii G.
  • 雑誌名: J Cancer Res Clin 巻: 145 ページ: 1773-1783
  • DOI: 10.1007/s00432-019-02937-9.
  • 査読あり
• [雑誌論文] EIF3E-RSPO2 and PIEZO1-RSPO2 fusions in colorectal traditional serrated adenoma. (2019)
  • 著者名/発表者名: Hashimoto T, Ogawa R, Yoshida H, Taniguchi H, Kojima M, Saito Y, Sekine S.
  • 雑誌名: Histopathology. 巻: 75 ページ: 266-273
  • DOI: 10.1111/his.13867.
  • 査読あり
• [学会発表] 当院における消化管NET-G1/G2症例からの治療後フォローアップの検討 (2019)
  • 著者名/発表者名: 奥村 圭, 小嶋 基寛
  • 学会等名: 日本内分泌学会
• [学会発表] EUS-FNAによる診断に苦慮したepithelioid type gastrointestinal stromal tumorの一例 (2019)
  • 著者名/発表者名: 説田 愛弓, 小林 隆樹, 枝 千春, 長谷川 恵美, 成清 羊佳, 菅野 優, 吉田 朗彦, 藤井 誠志, 小嶋 基寛
  • 学会等名: 日本臨床細胞学会
• [学会発表] 癌の悪性度を規定する因子-癌微小環境および脈管内腫瘍塞栓の役割 大腸癌の増殖・伸展における線維芽細胞活性化の役割 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小嶋 基寛
  • 学会等名: 日本乳癌学会総会
  • 招待講演
• [学会発表] 肉腫様肝細胞癌の臨床病理学的特徴と免疫学的微小環境に関する検討 (2019)
  • 著者名/発表者名: 森末 遼, 小嶋 基寛, 鈴木 利宙, 杉本 元一, 小林 信, 高橋 進一郎, 小西 大, 後藤田 直人, 中面 哲也
  • 学会等名: 日本病理学会総会
• [学会発表] Superficially serrated adenoma 大腸鋸歯状病変の新たなサブタイプの提案 (2019)
  • 著者名/発表者名: 橋本 大輝, 田中 優作, 森 泰昌, 吉田 裕, 谷口 浩和, 平岡 伸介, 小嶋 基寛, 大野 康寛, 斎藤 豊, 関根 茂樹
  • 学会等名: 日本病理学会総会
• [学会発表] 様々な症状を呈する膵・消化管神経内分泌腫瘍の診断と治療 (2019)
  • 著者名/発表者名: 池田 公史, 小嶋 基寛, 笠島 敦子
  • 学会等名: 日本内分泌学会
  • 招待講演
• [学会発表] More Objective Assessment of Tumor Regression in Post Neoadjuvant Therapy Resections for Pancreatic Ductal Adenocarcinoma:A Multicenter Study on Comparison of Multiple Tumor Regression Grading Systems (2019)
  • 著者名/発表者名: Matsuda Y, Ohkubo S, Fukumura Y, Hirabayashi K, Yamaguchi H, Sahara Y, Kawanishi A, Takahashi S, Arai T, Kojima M, Mino-Kenudson M
  • 学会等名: American pancreas association meeting
  • 国際学会
• [図書] 【大腸腫瘍の病理診断の課題と将来展望】大腸粘膜内癌の診断基準と問題点 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小嶋 基寛
  • 総ページ数: 6
  • 出版者: 医学書院
  • ISBN: 0536-2180
• [図書] がん生物学イラストレイテッド 第２版 膵がん (2019)
  • 著者名/発表者名: 小嶋 基寛、江角 浩安
  • 総ページ数: 10
  • 出版者: 羊土社
  • ISBN: 978-4-7581-2096-8
• [図書] 患者由来がんモデルを用いたがん研究実践ガイド 臨床検体取り扱い標準作業手順書、倫理、法規について (2019)
  • 著者名/発表者名: 小嶋 基寛、落合 淳
  • 総ページ数: 5
  • 出版者: 羊土社
  • ISBN: 978-4-7581-2242-9
• [備考] がん組織の病理像と物性の関連を基にした診断法の開発とバイオマーカーの探索
  • URL: https://www.ncc.go.jp/jp/epoc/division/pathology/kashiwa/research_summary/040/20170721182523.html