研究課題
本研究の目的は、がんの最適医療のために必要な病理学的指標の確立である。肺癌は、個別化医療が進みTKI, ICIなどの薬剤は患者に大きな恩恵をもたらしているものの、治療方針の最適化のためには、がんの個性を読み解き、適した治療を選択する指標(バイオマーカー)を確立する必要がある。ICIのバイオマーカーとしてはPD-L1が普及しているが、その性能は不十分で、より精度の高いバイオマーカーの探索と確立は喫緊の課題である。本研究では、ICIに対する病理学的予測指標を探索し、その意義を検討した。(1)ICI治療を受けた肺がんの病理検体の特徴を検討し、病理形態学的な指標(核異型度、炎症の程度)が予後予測指標となることを見出した。病理医の目視評価を客観化するために、HE染色標本のデジタル画像を作成し、がん細胞の形態学的特徴量(MBM)を画像解析により定量化した。MBMは決定木法モデルで妥当な性能があり、症例を増やして深層学習(DNN)を行ったところ、DNN-MBMは従来のバイオマーカーであるPD-L1を超える治療効果および予後予測性能を示した。(2)生物学的意義を検討するために、がんのMBMと腫瘍浸潤免疫細胞(TIL)、ゲノム情報、臨床情報との関連性を統計学的に解析した。MBMは、遺伝子変異、TMBと中等度に関連、PD-L1 IHCと弱く関連した。MBMは全例で解析可能であり、TMB, PD-L1と比して解析成功率が高く、より多くの症例で指標を提供できることが示唆された。(3)非小細胞癌、小細胞癌の免疫染色によるTIL検討の結果、CD8陽性Tリンパ球の腫瘍内への浸潤は予後、ICIの治療効果との関連が明らかとなった。以上より、非小細胞肺癌では、腫瘍組織の病理学的特徴は、客観的に抽出可能な因子であり、PD-L1とは独立しており、実臨床に応用可能な新規バイオマーカーとして有望といえる。
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