研究課題
多発性硬化症の新規治療法開発を目的に、実験的自己免疫性脳脊髄膜炎マウスモデル(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis:EAE)を用い以下を明らかにした。1.転写因子Xは疾患特異的CD4T細胞の分化に必要である:転写因子Xの欠損マウスはEAEを発症しないがサイトカイン産生やケモカイン発現の解析からTh1,Th17細胞は分化することが明らかになった。そこで、病因T細胞の分化の違いを明らかにするために、EAEの神経症状発症後に神経に浸潤している細胞を詳細に比較した。その結果、PD1陽性CD4T細胞の分化が転写因子X欠損マウスでは誘導されていないことを見出した。転写因子Xは疾患特異的CD4T細胞の分化に関わることが明らかになった。2.転写因子X阻害剤はEAE症状改善に有効である:今までにEAE発症後にタモキシフェン投与により転写因子Xの欠損を誘導するとEAEの症状が軽減することを明らかにしていた。本年はEAE発症後にペプチド合成による転写因子X阻害薬を投与し、治療効果があるかを検討した。その結果、投与後速やかに神経症状の改善が認められ、その後も悪化を認めにくかった。このことから転写因子X阻害薬が発症時の神経症状の改善に有効であることが明らかになった。3.転写因子X阻害剤として機能する低分子化合物の発見:低分子化合物のスクリーニングを行い4系統29種類の化合物が、分子的、機能的に転写因子X阻害剤として機能することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
以下の計画していた研究に関して、実験に取り組み結果が得られている。1.EAEに特徴的なリンパ球の解析と転写因子Xの関連を明らかにする2.転写因子X阻害剤の有効性の解析3.転写因子X阻害剤のスクリーニング
以下を検討し、研究のまとめを行う。1.疾患特異的CD4T細胞の分化機構の解析:転写因子Xが発現を制御する分子とのダブル欠損マウスを準備してEAEの発症を検討し、詳細な分子機構を明らかにする。現在マウスは作成され、必要な個体数を育てている。2.ドラッグデリバリ―法を応用した薬剤投与法の開発:薬剤をリポゾーム化し、投与することで単回、少量の投与で神経症状改善に有効かを確認する。3.スクリーニングで得られた低分子化合物の有効性・安全性の検討:化合物の提供先を再度協議して可能な薬剤を動物投与に必要な量提供いただく。EAE発症後に投与して神経症状の改善が認められるか解析するとともに、全身状態を観察し安全性を確認する。
実験に用いる新たなダブル欠損マウスの系等作製、飼育に時間がかかり、実験が次年度になったため。
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Translational Psychiatry
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Eur Arch Psychiatry and Clin Neurosci
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www.m.chiba-u.ac.jp/dept/biomed/
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