研究課題
1) Girdin変異マウスにおける臓器線維化モデルGirdinは癌関連線維芽細胞や創傷治癒にて遊走する線維芽細胞・筋線維芽細胞に発現し、AktによるS1416リン酸化およびEGFR/SrcによるY1764,1798リン酸化修飾を受ける。血管新生においてリン酸化部位に変異を導入したGirdin変異マウスでは発育不良を呈する。本年度、上記のリン酸化部位変異マウスを用いて各種の臓器線維化モデルを試したが、表現型の差はあるもののマイルドであるという結果だった。実験条件の最適化や解析項目の設定には表現型が明瞭な実験系を用いるのが近道と考え、最も表現型が強くなると予想されるGirdinノックアウトマウスの系を使用することとした。ストレートノックアウトでは、脳異常から摂食行動が不可となって離乳後に死亡するため、Cre-LoxPシステムによるコンディショナルノックアウトを準備した。全身発現を導くユビキチンプロモーター下にタモキシフェン依存性の活性化を導くUb-CreERT2マウスを用いて成体での時期特異的ノックアウトを行った。予備実験では、タモキシフェンの腹腔内投与もしくは経皮的投与神経によって、中枢神経におけるGirdinの発現量は1/4に低下した。本系を用いて皮膚・肝臓・肺での線維化モデルでの実験を準備している。2) Merlin変異マウスにおける皮膚線維化申請者が所属していた研究室では間葉系幹細胞の幹細胞性維持に機能するMeflin遺伝子を研究しており、ノックアウトマウスには皮膚線維化が生じる。本年度はMeflin変異マウスの皮膚線維化モデルマウスとしての有用性を検討した。全身臓器を調べると線維化が生じているのは皮膚のみで、他臓器には線維化はなかった。線維化は生後2週齢から始まり6週例で完成し、それ以降は進行しない。現在、Girdin変異マウスとの交配を進めている。
3: やや遅れている
リン酸化部位に変異を導入したGirdin変異マウスの解析を行い、マイルドな異常が生じるということが明らかとなったが、明確な表現型を得るため、Girdinコンディショナルノックアウトマウスを研究に使用するという方針転換を行うこととし、交配などに時間が掛かっている。更に、コロナウイルス感染の騒動のため動物実験が制限されて対応に苦慮している。また、申請者が藤田医科大学へ異動したため、実験環境のセットアップに時間がかかることとなった。しかしながら、前任の名古屋大学と藤田医科大学は同じ県内で距離も近く、名古屋大学に残した変異マウスを活用しながら研究を継続している。
Girdinコンディショナルノックアウトマウスを用い、ブレオマイシン皮下注射による皮膚線維化のモデル系、ブレオマイシン気管支注入による肺線維化のモデル系、四塩化炭素投与による肝線維化のモデル系にて実験と解析を進める。線維化した組織において、各種の線維芽細胞マーカーにて検索を行って間葉系幹細胞からの分化について調べるとともに、Girdinの機能でもある細胞移動が線維化に関連しているかを検討する。Meflinノックアウトマウスにおける皮膚線維化について発症機構を調べる。間葉系幹細胞の増減を調べるとともに、各種の線維芽細胞マーカーによる検索を行う。線維化部ではコラーゲン線維が増えていることから、線維の走行と太さを定量化して、線維化の表現型の詳細を調べる。
申請者が名古屋大学医学部から藤田医科大学医学部に所属が変わることとなったため、使用する研究費の割合を次年度に多くする事が研究を効率的に進める上で有用と考えて次年度使用額を設けました。生じた研究費は、消耗品や備品などの購入に使用し、新たな研究室での解析環境のスタートアップと研究計画の推進に役立てる計画です。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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