• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

新しいANCA関連血管炎動物モデルを用いて同定した血管保護遺伝子の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K07047
研究機関順天堂大学

研究代表者

濱野 慶朋  順天堂大学, 医学部, 准教授 (10281354)

研究分担者 小浦 美奈子  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 主任研究員 (10370967)
伊藤 吹夕  帝京大学, 公私立大学の部局等, 助手 (20415079)
鈴木 治  国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 研究リーダー (70235935)
石神 昭人  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50270658)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードANCA / ANCA関連血管炎 / SCG/Kjマウス / 位置的候補遺伝子 / RNAシークエンス
研究実績の概要

抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)の持続的産生がANCA関連血管炎(AAV)の原因である。我々はANCA産生機構の解明のため、AAV自然発症モデルマウスSCG/Kj由来のANCA産生感受性遺伝子座Scg-2/Man-1の導入実験、Scg-2/Man-1領域のエクソーム解析により見出されたMan-spa遺伝子変異の機能解析、Man-1支持区域のRNA-sequenceを行い、以下の結果を得た。(1)Scg-2/Man-1をB6.lprマウスに導入したSICMマウスの解析により、この遺伝子座がMPO-ANCA産生・半月体形成性腎炎・血管炎の発症をもたらすことを証明し報告した(Autoimmunity 52:208,2019)。(2)Man-spa遺伝子変異の機能解析 Man-spa遺伝子は、プロテアーゼを抑制して細胞を保護する遺伝子群である。
A. リコンビナントマウス(rm)Man-spaの作製:1.変異型(SCG/Kj)・正常型(B6)をクローニングし大腸菌大量培養とイオン交換クロマトグラフィー精製にて、高純度の正常型・変異型rmMan-spa を70mg程度ずつ合成した。これらの機能解析やin vivoの投与実験に供していく。
B. Man-spa遺伝子欠損マウスの作成:CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集にてMan-spa欠損マウスを作製し、今後解析予定である。
C. Man-1支配領域における遺伝子発現の網羅的解析:①高ANCA・②低ANCAのSICMマウスおよび③B6.lprマウスの脾細胞からRNAを抽出し、Maserパイプラインを用いて位置的候補遺伝子の網羅的発現解析を行った。この結果、上記3群間で発現が有意に変動する6つの遺伝子を得た。このうち一つは、ヒトAAVの環境因子である珪素のクリアランスに関連する遺伝子であり、候補遺伝子として解析予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1) rmMan-spaの作製と解析、SICM・B6の比較に基づくAAV病態解析:①rmMan-spaの作製:大腸菌大量調整とイオン交換クロマトグラフィー精製により、正常型および変異型のrmMan-spaをそれぞれ70mg合成し得た。②SICMと正常マウス(B6)との比較によるAAV病態の解析:Scg-2/Man-1をB6/lprマウスに導入したSICMマウスの解析により、この遺伝子座がMPO-ANCA産生・半月体形成性腎炎・血管炎の発症をもたらすことを証明し報告した(Autoimmunity 52:208,2019)。
(2)正常・変異Man-Spaタンパクの機能解析・細胞保護活性:高純度のrmMan-spaタンパク合成までに時間を要したので、これらの機能解析・細胞保護作用を今後進めていく。予備実験としてrmMan-spaによるタンパク分解酵素阻害活性を解析した。変異型は正常型に比べタンパク分解酵素の一部に対する阻害作用が低い傾向が認められた。活性化顆粒球による細胞傷害やNETs形成への影響を今後解析していく。
(3)SCG/KjおよびSICM個体におけるMan-Spa補完実験、抑制実験:SICMや他のAAVモデルマウスへのMan-Spaタンパク・抗Man-Spa抗体投与による疾患形質の解析は今後の課題である。
(4)Man-spa欠損マウスによるAAV再現実験とヒト型Man-spa投与実験:ゲノム編集によりMan-spa欠損マウスを作製し、凍結杯の状態でストックしている。これらより個体を得てMPO-ANCA産生への影響を解析していく。ヒトMan-Spaタンパクを産生し、活性化顆粒球やNETsによる細胞傷害試験への影響、AAVモデルマウスへの投与実験を行う。これらを発展させ、リード薬作製へつなげていきたい。

今後の研究の推進方策

(I)高純度の正常型・変異型rmMan-spaタンパクの合成が完了し、このアミノ酸変異の影響を、生化学的活性、および活性化顆粒球による細胞傷害やNETs形成の変化を検討し解析していく。
(II)SCG/KjおよびSICM個体におけるMan-Spa補完実験、抑制実験
SICMや他のAAVモデルマウスへのMan-Spaタンパク・抗Man-Spa抗体投与による疾患形質の変化を解析していく。
(III)Man-spa欠損マウスによるAAV再現実験とヒト型Man-spa投与実験
ゲノム編集によりMan-spa欠損マウスを作製し、凍結杯の状態でストックしている。これらより個体を得てMPO-ANCA産生への影響を解析していく。ヒトMan-Spaタンパクを産生し、活性化顆粒球やNETsによる細胞傷害試験への影響、AAVモデルマウスへの治療的投与実験を行う。折しも、全世界で新型コロナウイルス感染が脅威となっており、感染者の急速かつ重篤な全身炎症が広く報道されている。この遺伝子が持つタンパク分解酵素阻害活性は、治療薬開発の糸口となる可能性もある。これらを発展させ、リード薬作製へつなげていきたい。

次年度使用額が生じた理由

In vivo実験へ着手する前段階であるため次年度使用額が生じている。これらはSICM、Man-spaノックアウトマウスの個体発生、交配、維持、形質解析(特にマウスMPO-ANCA測定)に供される予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Vasculitis and Crescentic Glomerulonephritis in a Newly Established Congenic Mouse Strain Derived From ANCA-associated Vasculitis-Prone SCG/Kj Mice2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshitomo Hamano, Fuyu Ito, Osamu Suzuki, Minako Koura, Shuji Matsuoka, Toshiyuki Kobayashi, Yoshinobu Sugitani, Nadila Wali, Ai Koyanagi, Okio Hino, Shoichi Suzuki, Ryuichi Sugamata, Hiromichi Yoshizawa, Wako Yumura, Naoki Maruyama, Yosuke Kameoka, Yoshihiro Noda, Yasuko Hasegawa, Tomio Arai, Kazuo Suzuki
    • 雑誌名

      Autoimmunity

      巻: 52 ページ: 208-219

    • DOI

      10.1080/08916934.2019.1658191

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Vasculitis and Crescentic Glomerulonephritis in a Newly Established Congenic Mouse Strain Derived From ANCA-associated Vasculitis-Prone SCG/Kj Mice2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshitomo Hamano, Fuyu Ito, Osamu Suzuki, Minako Koura, Shuji Matsuoka, Toshiyuki Kobayashi, Yoshinobu Sugitani, Nadila Wali, Ai Koyanagi, Okio Hino, Shoichi Suzuki, Ryuichi Sugamata, Hiromichi Yoshizawa, Wako Yumura, Naoki Maruyama, Yosuke Kameoka, Yoshihiro Noda, Yasuko Hasegawa, Tomio Arai, Kazuo Suzuki
    • 学会等名
      International Vasculitis and ANCA Workshop
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi