研究課題/領域番号 |
18K07052
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
望月 早月 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 助教 (80365428)
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研究分担者 |
上野 秀樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 教授 (90597535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ADAM / CAF / 線維性癌間質反応 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
線維性癌間質反応(Desmoplastic reaction: DR)は、従来の臨床病理学的因子を凌ぐ優れた予後予測指標ではあるが本病変の分子機構については不明である。このようなDRの形態学的変化には、細胞外マトリックスの産生と分解が深く関与しており、CAF(Cancer-associated fibroblasts)から産生されるADAM分子などのタンパク質分解酵素の関与が推定される。本研究では、CAFで発現するADAM分子の発現とDRへの関与について検討を行った。 大腸癌手術切除検体からDRの分類別にCAFを培養した。RT-PCR法により主なADAM分子のうちADAM9, ADAM10, ADAM17がCAFで発現陽性であった。イムノブロット法によりADAM9はmatureな症例に比べてimmatureな症例のCAFにおいて有意に活性型で高発現していた。また、レーザーマイクロダイセクションを用いて癌浸潤先進部組織をDRの分類別に採取しADAM分子についてreal-time qPCR法で定量したところ、ADAM9分子の発現はimmature>intermediate>matureの順で発現が陽性であった。大腸癌細胞株とCAFを混合してヌードマウス皮下に移植したところmature症例から採取したCAFに比較し、immature症例から採取したCAFとの混合移植したマウスでは移植片の増殖が有意に促進された。 これらのことからCAFsで発現するADAM9の発現はDRの形態学的変化に関連しており、大腸癌の増殖や転移に影響を及ぼしている可能性が示唆された。現在、大腸癌オルガノイドを用いてヒト大腸癌由来CAFとマウスへ混合移植を行いDRの形成機構や治療耐性の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌手術検体から線維性癌間質反応の分類別にCAF(Cancer-associated fibroblasts)の培養に成功し、それらのCAFにおいてADAM分子の中でもADAM9の発現上昇し癌細胞の増殖に関与することをin vitroとin vivoの実験系で明らかにできている。さらに最近では、大腸癌オルガノイドの培養・継代にも成功しており、今後ヒト大腸癌オルガノイドとCAFをマウスに混合移植することにより、線維性癌間質反応(Desmoplastic reaction: DR)の分子生物学的背景がより明らかになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CAFで発現するADAM9が癌細胞増殖に関わる詳細なメカニズムを調べるために、CAFでのADAM9の発現をshADAM9ウイルスベクターを用いて抑制し、その培養上清で大腸癌細胞刺激により細胞増殖が抑制されるのか検討する。そのメカニズムとしてADAM9によるHB-EGFのシェディングとそれによるEGFのシグナル経路の活性化が考えられ、大腸癌細胞におけるEGF受容体のリン酸化(活性化)をイムノブロットで検討する。また、ADAM9の大腸癌細胞への転移能への影響を調べるために、大腸癌細胞に蛍光・発光遺伝子を導入した細胞株(HT-29ffLuc-cp156とHCT-116ffLuc-cp156作製済み)を用いて、それらの細胞とCAFをマウスの盲腸漿膜下に移植することにより、CAFによる大腸癌細胞転移能の影響をIVISでリアルタイムに観察する。
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