研究課題/領域番号 |
18K07052
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
望月 早月 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 助教 (80365428)
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研究分担者 |
上野 秀樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 教授 (90597535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 線維性癌間質反応 / がん関連線維芽細胞 / ADAM / オルガノイド |
研究実績の概要 |
癌細胞が浸潤する際に線維芽細胞等が増生して間質が形成される状態を線維性癌間質反応 (Desmoplastic reaction :DR) と称するが、これまでに当教室では、DRを腫瘍の発育先進部に特異的に出現するmyxoidな間質およびkeloid-like collagenを基準としてimmature、intermediate、matureの3群に分ける「DR分類」を考案し、ステージII, III大腸癌におけるDR分類別の5年無再発生存率はimmature群で49-51%、intermediate群で72-78%、mature群で85-87%と、予後予測因子として有用であることを見出している。しかしながらDR分類の生物学的背景や癌悪性度に寄与するメカニズムは明らかになっていない。 本研究では、大腸癌手術検体をDR分類別 (mature, intermediate, immature) に採取して癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblasts: CAFs) を培養し、real-time PCRとイムノブロット法によりCAFsから分泌される蛋白質分解酵素のADAM9 (a disintegrin and metalloproteinase 9) がDRの形態学的変化と関連していることを見出し、mature症例と比較し、immature症例から採取したCAFsの培養上清と共培養した大腸癌株化細胞およびオルガノイドは増殖が促進され、CAFsでのADAM9発現抑制によりその増殖が抑制される結果が得られた(論文投準備中)。さらに大腸癌株化細胞を用いた異種移植モデルの検討から、mature症例と比較し、immature症例から採取したCAFsと混合した大腸癌株化細胞は、マウス皮下での増殖が亢進し、また盲腸同所移植により播種性転移の形成が促進された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoマウスモデルを用いて線維性癌間質反応別のCAFが癌細胞の増殖や転移に関与していることを明らかにしている。また、大腸癌手術検体よりオルガノイドの培養にも成功し、オルガノイドを用いた研究を進めている。これらのことから研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌細胞株とDR分類別CAFsの共培養で大腸癌細胞の増殖に変化が見られることに対し、共培養によるDR分類別CAFsの増殖能や転移能については明らかになっていない。また、近年、米国ImmunoGen 社によりADAM9を標的とした抗体薬物複合体が開発され、非小細胞肺癌、胃癌および大腸癌モデルのマウスにおいて抗腫瘍効果を示すことが報告されている(Cancer Res 2017;77 Abstract 37)。今後、CAFsで発現するADAM9を標的とした治療薬の開発により、大腸癌領域においてはimmature DRを有する予後不良な症例群への治療効果が期待できる。 そこで今後は,大腸癌大腸癌線維性癌間質由来CAFsにLuciferaseとVenus融合遺伝子を導入したCAFsffuc-cp156を作製し、大腸癌細胞株と共培養することによりDR分類別CAFsの増殖能と転移能についてin vitroとin vivoの実験系で観察する。また、抗ADAM9抗体を用いてマウス皮下や盲腸移植片の増殖・転移抑制の治療効果が認められるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの蔓延による影響で様々な学会、研究会が中止になったため使用できなかったが、次年度の国内や海外国際学会での研究成果発表のため、その参加・旅費等に使用予定である。
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