研究課題
本研究では大腸癌線維性癌間質反応(Desmoplastic reaction: DR)とADAM分子との関係ならびにDRが癌の悪性度に関与するメカニズムについて検討した。大腸癌手術切除検体からがん関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts : CAFs)や大腸癌オルガノイドを培養し、CAFsで発現するADAM分子についてRT-PCR法、real-time PCR法、イムノブロット法を用いてDR分類別に比較検討した。その結果、13種類あるメタロプロテアーゼ型ADAM分子の中で、分泌型のADAM9sはmature症例に比べてimmature症例から採取したCAFsにおいて有意に高発現していた。mature症例と比較しimmature症例から採取したCAFsの培養上清と共培養した大腸癌細胞株 (HCT-116, HT-29) や大腸癌オルガノイドは増殖能、遊走能、細胞内extracellular signal-regulated kinases 1/2(ERK 1/2)のリン酸化が有意に促進され、shRNAを用いたCAFsでのADAM9sの発現抑制によりHCT-116とHT-29の増殖能、遊走能、ERK1/2のリン酸化が抑制された。さらにmature症例と比較しimmature症例から採取したCAFsをLuciferaseとVenus融合遺伝子を導入したHCT-116ffLuc-cp156やHT-29 ffLuc-cp156とヌードマウスの盲腸漿膜下層に混合移植した場合、有意に増殖が亢進し腹膜播種が高度に形成された。DRの形態的変化はCAFsにおけるADAM9sの発現と関連しており、ADAM9sは大腸癌細胞の細胞内ERK1/2のリン酸化促進と細胞増殖と遊走を促進し癌悪性度へ影響を及ぼしていると考えられた。
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