研究課題/領域番号 |
18K07053
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
平林 容子 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター, 安全性生物試験研究センター長 (30291115)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 造血幹細胞 / エクソソーム / 造血ニッチ |
研究実績の概要 |
これまで白血病誘発線量とされる2 Gyの電離放射線(ガンマ線)の単回全身照射によって、造血幹・前駆細胞の酸化的ストレス状態は照射1.5年を経ても対照群より高値をとることや、その細胞回転は直後の抑制状態からの回復後、照射10カ月以後は亢進状態が持続すること、Fyn, PiK3r1, Ccnd1などの細胞回転関連遺伝子が造血幹細胞分画に限局して過剰発現していること、などを見出した。本研究では、若年期に受けた2Gyの照射による急性期の障害性からの回復後に惹き起こされる白血病を含む遷延性病変の発症機序をなすと考えられるこれらの知見の分子基盤を、特に末梢血中のエクソソームRNAに焦点をあてて、明らかにすることを企図している。 即ち、照射後経時的に変化してゆく造血幹前駆細胞側のみならず、造血を支えるニッチ(niche)との相互作用をも包含する指標として、病態や組織 傷害の指標への適用の可能性が期待される末梢血中のエクソソームRNAに着目し、未分化な造血幹前駆細胞の長期にわたる遷延性の回復遅延のマーカー遺伝子の探索を行う。これによって、白血病発症につながる機構解明の手がかりが得られるものと期待される。 今年度は、昨年度に行ったエクソソームRNAの計測条件の設定に基づき、若齢期に単回の電離放射線を全身照射した18ヶ月齢のマウスと非照射対照群とからそれぞれ分離保存していた骨髄細胞からエクソソームRNAを抽出する事に成功し、両群で明らかに発現量の異なる一連のsmall RNAsが分離された。これらをontology解析したところ、加齢、幹細胞分化、アポトーシス制御などに関連することが示された。この結果は、これまでに得られた限定的な遺伝子群を対象とした定量PCRによる結果とも符合するものと考えられるので、それらの制御下の遺伝子群の解明を進めると同時に、照射後の経時的推移についても解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若齢期に単回の電離放射線を全身照射した18ヶ月齢のマウスと非照射対照群とからそれぞれ分離保存していた骨髄細胞からエクソソームRNAを抽出し、次世代シーケンスによる網羅的解析により、遷延性の障害や加齢影響のバイオマーカー候補となりうるエクソソームRNAの単離に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果として、若齢期に単回の電離放射線を全身照射した18ヶ月齢のマウスと非照射対照群とからそれぞれ分離保存していた骨髄細胞から抽出したエクソソームRNAから、遷延性の障害や加齢影響のバイオマーカー候補として単離した新規の small RNA について、それらの制御下の遺伝子群の解明を行い、白血病の機序との関連について詳細に解析を行う。更に、照射後経時的に変化してゆく造血幹前駆細胞側のみならず、造血を支えるニッチ(niche)との相互作用をも包含する指標として、病態や組織 傷害の指標への適用の可能性が期待される末梢血中のエクソソームRNAに着目し、若齢期における単回照射後の経時的推移を含めた解析を進め、所期の目的である未分化な造血幹前駆細胞の長期にわたる遷延性の回復遅延を反映するマーカー遺伝子の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の検討結果をもとに解析をすすめるにあたり、まずは、加齢個体からの保存検体の解析を優先させたことから、前年度からの繰越も含め、余剰が生じた。 来年度前半は、新型コロナウイルス感染症対策として、国内外の会議が中止ないしは、web開催となっており、旅費として計上した分についても、今後の推移を見ながら、必要に応じて解析用の消耗品に充当する。
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