HTLV-1は、Adult T-cell leukemia(ATL)等のHTLV-1関連疾患を引き起こす。ATLの発症は1年あたりキャリア1000~3000人に1人の割合で起こり、生涯発症率は約4~5%と考えられている。HTLV-1キャリアにおける発症予防ならびに新たな感染を阻止するための手段として、ワクチン接種が考えられる。Envタンパク質に対する抗体がウイルスを中和するという報告から、Envタンパク質を抗原としたワクチンの接種により、感染防御が可能であると期待できる。HTLV-1の感染防御を評価する最適な動物実験モデルは存在しないが、マウスにHTLV-1感染ヒトT細胞であるMT-2細胞を移入することで、ウイルスゲノムがマウスゲノムに組み込まれプロウイルス化するとの報告がある。ワクチン接種によりこのプロウイルス化を阻止できれば、ワクチンにより感染防御を獲得できたと評価可能であると考えた。 マウスへのHTLV-1感染効率は低いとされるため、プロウイルスをReal-time PCRで検出するためには、可能な限りゲノムDNAを濃く調製する必要がある。これまでは市販のゲノムDNA調製キットを用い、推奨の手順に従い調製してきたが、求める濃度で調製できない場合があった。今年度も引き続き、より効率よく感染防御効果を評価できるように、MT-2細胞の移入後の脾臓ならびに腸間膜リンパ節を用いて、各組織の破砕方法ならびに高濃度でゲノムDNAを調製する方法の比較検討を実施した。この結果、スピンカラムを用いたゲノムDNAでは期待したほど濃縮ができないことが明らかとなり、抽出したゲノムDNAをカラム精製した後にエタノール沈殿により濃縮することで改善する傾向が認められた。
|