申請者らは、iPS細胞から壁細胞を分化誘導する手法を用いて、CADASILの病態メカニズムの解明を進めてきたが、その中でいくつかの治療ターゲット候補分子が見いだされた。本研究では、申請者が確立したiPSMCのin vitro病態モデルを用いて、各種阻害剤や中和抗体、核酸医薬品などのスクリーニングを行い、CADASILの新規治療薬の候補を絞り込むことを目的とした。 令和2年度は、CADASIL壁細胞の低酸素刺激への反応性について再検証するため、低酸素ストレスを誘導する塩化コバルトの添加を行った。これにより、コントロール細胞は塩化コバルトの添加により、むしろわずかに増殖が活性化されるのに対し、CADASIL壁細胞は細胞死による細胞数の減少が起こることが確認された。また、治療薬候補Bの添加により、塩化コバルトによる細胞死が抑制される可能性が示唆された。この細胞死の抑制効果は、低酸素によるHIF1aの発現量の改善によるものと思われる。
|