研究課題/領域番号 |
18K07061
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福重 真一 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90192723)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌 / ゲノム / 遺伝子 / 前立腺癌 / PYCARD / DNAメチル化 / モデルマウス / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究では、前立腺癌モデルマウスとPycardノックアウトマウスを掛け合わせることによって、前立腺癌において高頻度メチル化異常を示すPYCARD遺伝子の前立腺癌の発生・進展における役割を明らかにすることを目的とする。また、ヒト前立腺癌組織の免疫染色により、PYCARD不活化の時期、臨床病理学的因子との関連を調べる。 本年度は、① Pycard +/- 雌雄マウスからPycard -/- 雌マウスの作製、② Pycard -/- 雌マウスとPten +/flox 凍結精子からIVF(in vitro fertilization)によりPycard+/-; Pten +/flox 雌雄マウスの作製をおこなった。 また、ヒト前立腺癌50症例を用い、メチル化特異的PCR(MSP)法によるPYCARDプロモーター領域のメチル化と免疫染色法によるPYCARD蛋白発現を詳細に解析した。マイクロダイセクションを用いた腫瘍部、正常部のMSP解析では、PYCARDの腫瘍特異的メチル化は92%(46/50)と高頻度であり、PYCARDのDNAメチル化が前立腺癌の診断におけるバイオマーカーとなる可能性を示した。一方、PYCARD免疫染色は、70%(35/50)の症例で正常な上皮細胞あるいは基底細胞が陽性を示し、腫瘍部で陰性を示した。残りの15症例のうち11症例は正常部、腫瘍部共に陰性を示し、4症例は正常部、腫瘍部共に陽性を示した。正常部、腫瘍部共に陽性を示した4症例中3症例は正常部の方がより強い染色を示した。さらに前癌病変HGPIN(High-grade prostatic intraepithelial neoplasia)が見られる標本が5症例あったが、すべてPYCARDは陰性であった。これらの結果は、PYCARDの発現制御にはDNAメチル化以外の機構が存在することを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Pycard +/- 雌雄マウスの自然交配から子マウスが生まれるまでに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
Pycard+/-; Pten+/flox 雌雄マウスの自然交配によりPycard-/-; Ptenflox/floxマウスを作製する。また、PB-Cre4マウス凍結受精卵の個体復元をおこない、Pycard-/-; Ptenflox/floxマウスとの掛け合わせによって前立腺特異的なPten-/-; Pycard-/-マウスを作製し、Pten-/-; Pycard-/floxマウス、Pten-/-; Pycardflox/floxマウスとの比較によってHGPIN(High-grade prostatic intraepithelial neoplasia)や前立腺癌の発生時期、腫瘍径の違いなどに焦点を当て解析していく。また、PYCARDの免疫染色については、マイクロダイセクションした組織が悪性度を示すグリソンスコアが3+4あるいはそれ以上の比較的大きな腫瘍であったため、グリソンスコア3+3あるいは、それ以下の症例や前癌病変HGPINを含む症例についてさらに解析を進める。
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