本研究では、前立腺癌モデルマウスを用い、ヒト前立腺癌において高頻度メチル化異常を示すPYCARD遺伝子の前立腺癌の発生、進展における役割を明らかにすることを目的とした。PB-Cre4 +/-; Pten flox/flox 雄マウスは、Creが雄マウスから供給された時にのみ、前立腺特異的にPtenを欠失し、生後9週で前癌病変、17週~26週で浸潤性前立腺癌が形成される。本年度は、① PB-Cre4 +/-; Pten flox/flox; Pycard +/+、② PB-Cre4 +/-; Pten flox/flox; Pycard +/-、③ PB-Cre4 +/-; Pten flox/flox; Pycard -/- の雄マウスを作製し、生後10週、15週、30週で前立腺、肝臓、肺を採取し、Pycardの遺伝子型の違いによる前立腺癌の発生、進展における影響を解析した。 それぞれの時期において以下の3点を見出した。1.生後10週で前立腺に前癌病変が見られ、Pycard +/+ では、前癌病変の過形成の割合が高く、Carcinoma in situ(CIS)の割合は低かった。一方、Pycard +/-、Pycard -/- では、過形成病変よりもCISの割合が増加していた。2.生後15週では10週に比べ前癌病変のさらなる進行が見られた。Pycard +/+ のマウスは得られず、Pycard +/-と Pycard -/- では、過形成、CISに組織的な違いは見いだせなかった。3.生後30週で一部に浸潤性前立腺癌が見られた。Pycard +/+ のマウスは得られず、Pycard +/-、-/- では、浸潤性前立腺癌に組織的な違いは見いだせなかったが、Pycard -/- の方がPycard +/- に比べ腫瘍サイズが大きい傾向が見られた。
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