研究実績の概要 |
加齢に伴って生じる視床下部の神経幹細胞の減少や機能低下は、全身の様々な老化表現型を引き起こすことが示されている(Nature.2013,497:211, Nature.2017,548:52.)。興味深いことに、このような視床下部の神経幹細胞の機能低下は、脳内におこる炎症が原因と考えられている。本研究では、加齢に伴い脳内で非感染性に分泌されることが知られているI型インターフェロン(IFN)が、この生理的な脳内炎症を誘導する分子候補と考え研究を進めている。 本研究では、この脳内IFNシグナルの全身老化への関与を明らかにすることが目的である。そこで本年度は、まずIFNシグナルの負の制御因子であるIRF2に着目し、同遺伝子が実際にマウスの脳神経細胞に発現することをRNAscope in situ hybridizationを用いて確認した。その上で、慢性的に脳内のIFNシグナルが過剰になる状況を再現するために、申請者が独自に作製したIrf2-floxマウスとNestin-Creマウスを交配し、Irf2を脳特異的に欠損するマウス(Irf2fl/fl: Nestin-Cre)を作製した。現在同マウスにおいて、老化表現型の早期出現が認められるかを観察中である。また、本年度は老化表現型を評価するための行動実験系として、オープンフィールドテスト、モリス水迷路を導入した。他方、IFNの作用はミクログリアの活性化を引き起こすことが知られていることから(Nature.2017,546:539)、この過程を介した間接的な神経細胞及び神経幹細胞の機能低下誘導の可能性を観察するために、マクロファージ(ミクログリア)特異的なIrf2欠損マウス(Irf2fl/fl: Cx3cr1-CreERT2)を作製した。
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