研究課題/領域番号 |
18K07068
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
和田 直樹 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (80521731)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / リンパ形質細胞性リンパ腫 / 分化動態 |
研究実績の概要 |
腫瘍はクローナルな集団であるが、この集団を1個1個の細胞にばらした場合、再び腫瘍を形成できる細胞もあれば、腫瘍を形成できない細胞もある。腫瘍を形成できる細胞を腫瘍幹細胞と呼び、元の集団の一部のみがその性格を持つとされる。腫瘍幹細胞はアポトーシシス抵抗性・治療抵抗性で再発や転移の原因になると考えられており、未熟で多分化能を有し、活性酸素除去能が高いなどの性質が知られている。リンパ形質細胞性リンパ腫は形質細胞分化を示すB細胞性リンパ腫であり、Bリンパ球マーカーであるCD20・形質細胞マーカーであるCD138の発現を伴う。リンパ形質細胞性リンパ腫の腫瘍細胞株であるMWCL-1でCD20・CD138抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行うと、CD20・CD138の発現が乏しい分画~CD20の発現が強い分画~CD138の発現が強い分画が認められる。これらの分画のうち、CD20・CD138の発現が乏しい未熟な分画は多分化能を有しアポトーシス抵抗性であること、逆に、CD138の発現が強い分化した分画はアポトーシスに脆弱であることを既に報告した。従って、リンパ形質細胞性リンパ腫においてCD20・CD138の発現が乏しい分画が腫瘍幹細胞の候補と考えられ、リンパ形質細胞性リンパ腫の分化促進因子は、リンパ形質細胞性リンパ腫のアポトーシス抵抗性を弱め、リンパ形質細胞性リンパ腫をアポトーシスに脆弱な状態にすると考えられる。そのような因子を探索し、グルタミンがリンパ形質細胞性リンパ腫の形質細胞分化を促進することも既に報告した。抗腫瘍効果(分化誘導療法など)への活用につながる可能性がある成果と考え、現在、他にもそのような因子がないか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の進捗状況で述べたように、グルタミンがリンパ形質細胞性リンパ腫の形質細胞分化を促進する因子であることが分かったから。ただし、その後は、他にもリンパ形質細胞性リンパ腫の分化促進因子がないか探索中の状況なので、「当初の計画以上に進展している」とまでは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
他にもリンパ形質細胞性リンパ腫の分化促進因子がないか引き続き探索する。そして、抗腫瘍効果(分化誘導療法など)への活用につなげたい。これまでに低酸素環境、大気圧プラズマやグルタミンがリンパ形質細胞性リンパ腫の分化動態に及ぼす効果を明らかにしてきたが、リンパ形質細胞性リンパ腫以外の細胞で知られている分化動態に関わる既知の因子などを中心に、現在、適切な因子がないか模索中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度から当該年度にかけて研究機関の異動があり、新しい研究環境を構築する必要があったため。次年度は、構築した新しい研究環境において、他にもリンパ形質細胞性リンパ腫の分化促進因子がないかの探索などリンパ形質細胞性リンパ腫の分化動態に関わる因子の検討を推進し、抗体など試薬が必要な実験を繰り返し行う。また、学会に参加して研究成果を発表する。これら物品費・学会参加費で、次年度使用額が生じた分と翌年度分として請求した助成金をまとめて使い切る。
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