研究課題
プロテアソームは、細胞内の不要・不良なタンパク質を分解する巨大なタンパク複合体で、細胞の恒常性維持のみならず細胞内シグナル伝達や抗原提示等、様々な生命現象に関与している。また、プロテアソームサブユニットに生じた遺伝子変異により、自然免疫機構の自立的な活性化や調節異常が引き起こされ、周期的な発熱や全身性の慢性炎症を特徴とするプロテアソーム関連自己炎症性疾患を発症する。特に、中條-西村症候群は、免疫プロテアソームbeta5iサブユニットにアミノ酸置換を伴う変異をホモで有することにより発症することが明らかにされている。この中條-西村症候群様の症状を呈する患者より、別の免疫プロテアソームサブユニット、beta1iサブユニットにアミノ酸置換を伴うde novoのヘテロ変異が見いだされた。このアミノ酸残基は、広く種を超えて保存されており、非常に重要な部位であることが推測された。そこで、この変異の病態への関与や病理的意義を明らかにするために、当該変異をマウスに導入した。変異導入ホモマウスは、原因は不明であるが、6ヶ月齢までに全数死亡した。一方、ヘテロマウスは、脾臓B細胞やT細胞の減少、骨髄中での好中球や単球が増加、さらには、脾臓におけるケモカイン受容体XCR1陽性樹状細胞を中心とした通常型樹状細胞(cDC)の減少や形質細胞様樹状細胞(pDC)上の細胞表面分子の発現低下など、様々な異常が認められた。また、骨髄細胞をFlt3L存在下で培養し樹状細胞を誘導しても、pDC上の細胞表面分子の発現低下やXCR1陽性cDCの分化障害が認められた。以上のことから、この変異が樹状細胞自身においてその分化異常を引き起こしていることが明らかになった。今後、本変異導入マウスを用いて、好中球や単球のみならず樹状細胞を含めた自然免疫機構におけるプロテアソームの機能的・病理的意義を検討する。
2: おおむね順調に進展している
現在、変異導入マウスは、順調に増えてきている。また、比較対象とするbeta1i遺伝子欠損マウスの作成も完了している。骨髄中の各種前駆細胞について、FACS解析の予備的実験も行っており、変異導入マウス、beta1i遺伝子欠損マウスを解析できる状況にある。
変異導入マウスについて、特に骨髄中に存在する、単球や樹状細胞などヘテロマウスで以上の認められた細胞の各種前駆細胞について、FACS解析を行う。また、このような分化の異常が、細胞自身にあるのか、または、それを支持する環境にあるのか明らかにするために、骨髄細胞キメラを作成し各種免疫担当細胞の数や性状を検討し、病態メカニズムの解明を進める。また、皮膚炎など、各種疾患モデルの確立や予備的実験なども合わせて進める。得られた知見の解析をすすめ、学会などで発表する。
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