研究課題
プロテアソームは、タンパク質分解を行う巨大なタンパク複合体で、細胞内の不要・不良な蛋白質の分解に加え、細胞内シグナル伝達、抗原提示等、様々な生命現象に関与している。また、プロテアソームを構成する各種サブユニットに遺伝子変異が生じることで自然免疫機構の自動的な活性化や調節異常が引き起こされ、周期的な発熱や全身性の慢性炎症を特徴とするプロテアソーム関連自己炎症性疾患を発症する。中でも、中條-西村症候群は、プロテアソームβ5iサブユニットにアミノ酸置換を伴う変異をホモで有することにより発症する。これまでに、中條-西村症候群様の症状を呈する患者のβ1iサブユニット遺伝子(PSMB9)より、アミノ酸置換を伴うde novoのヘテロ変異が見いだされた。本研究では、このβ1iサブユニット変異を導入したノックイン(KI)マウスを用いて、変異の病理的意義の解明を目指すと共に、自然免疫機構におけるプロテアソームの機能的意義の探索を行っている。これまでに、ヘテロKIマウスでの、脾臓B細胞やT細胞の減少、骨髄中での好中球や単球(MO)の増加、さらには、脾臓におけるケモカイン受容体XCR1陽性樹状細胞を中心とした通常型樹状細胞の減少など、様々な異常が認められた。さらに、MOについて解析を進めたところ、野生型マウスの脾臓MOはLy6C陽性のclassical MOとLy6C陰性のnon-classical MOとがそれぞれおおよそ4:6程度の比率で認められるの対し、ヘテロノKIマウスの脾臓ではLy6C陽性MOが70%以上を占めており、MOの増加だけでなく分化の障害も推測された。今後、本KIマウスを用いて、好中球やMOのみならず樹状細胞を含めたmyeloid系の細胞、さらにはそれらの前駆細胞を含めた自然免疫機構におけるプロテアソームの機能的・病理的意義を検討する。
2: おおむね順調に進展している
現在、ノックインマウスおよび、比較対象とするβ1i遺伝子欠損マウスの作成も完了している。研究室の異動後、遺伝子組換えマウスも順調に増えてきている。骨髄中の各種前駆細胞について、FACS解析も進めている。また、その他実験系についても、確立を進めている。
ノックインマウスおよびノックアウトマウスを用いた、単球や樹状細胞などの各種前駆細胞の割合や数などについてのFACS解析を継続して行う。さらに、このような分化の異常が細胞自身にあるのか、あるいは、それを支持する骨髄環境にあるのか明らかにするために、骨髄細胞キメラを作成し、各種免疫細胞の数や性状を検討し、病態メカニズムの解明を進める。また、皮膚炎など、各種疾患モデルの確立や予備的実験なども合わせて進める。得られた知見については、学会などで発表する。
研究室の異動により、研究室立ち上げに時間がかかったため。次年度では、物品費として使用する。
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