研究課題/領域番号 |
18K07072
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
島田 厚良 杏林大学, 保健学部, 教授 (50311444)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脈絡叢 / ミエロイド系譜細胞 / 頭部間葉 |
研究実績の概要 |
脳のミクログリアは胎生期卵黄嚢に由来し、頭部間葉に集積するPrimitive myeloid progenitorsが起源である。Progenitorsが脳内に進入して後、ミクログリアは自己複製によって維持され、骨髄造血系からの供給は受けないことは、骨髄キメラを用いた我々の研究結果からも証明された。一方、脈絡叢付着部近傍の脳の小領域には骨髄に由来するミエロイド系譜細胞が存在することを発見した。そこで、ミエロイド系譜細胞は脈絡叢間質あるいはそれと解剖学的に連続する髄膜空間を経由して脳に進入すると考え、マウスの生後発達段階で、脈絡叢間質や髄膜の幼若組織である頭部間葉に存在するマクロファージと脳実質内のミクログリアとの関係を組織学的に検討した。その手法として、頭蓋骨・硬膜・髄膜の全てを温存したまま、脈絡叢間質が閉塞してしまわないような条件下で、生後1日齢から成体に至るまでの各段階におけるマウスを経心臓的にザンボニ液にて灌流固定し、頭蓋吊るし法にて後固定を行うのが最善であることが判明した。組織学的検討の結果、生後1日齢(P1)では間脳・中脳から脳幹にかけての領域限定的にミクログリアが存在すること、小脳および大脳領域の実質内にはP7前後からミクログリアが急激に増加し始め、P14にかけて盛んに脳内へと進入することを確認した。脈絡叢付着部では間質から脳実質へと移行するミエロイド細胞が、また、脈絡叢上皮を貫いて上皮表層に出現した後に脳室上衣へと移動し、脳室周囲の髄質領域から脳実質へ進入すると思われるミエロイド細胞が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脈絡叢がミエロイド系譜細胞が脳実質へと進入する際の経路になり得ることを証明するために、当初は骨髄キメラの成体マウスを作製することを第一に考えていた。これに対し、本年度は生後発達の段階で脳外のミエロイド系譜細胞が脳実質へと進入する際に利用する可能性がある経路を見出すことが出来た。とくに、頭部間葉およびそれと解剖学的に連続する脈絡叢間質に集積したミエロイド系譜細胞は、脈絡叢付着部で間質から脳実質へと移動していると考えられた。また、脈絡叢間質から上皮を貫いて上皮表層に出現した後に脳室上衣へと移動し、髄質領域の脳実質へ進入すると思われる像も認められた。これらの過程で、生後発達段階にある頭蓋内組織を、頭蓋骨・硬膜・髄膜を温存した状態で組織学的標本とする技術を確立し得た。これにより、成体マウスを用いて骨髄キメラマウスを作製する以外にも、本課題における仮説を検証する方法の幅が広げられたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、成体マウスを利用した骨髄キメラを作製することに加え、生後発達段階にあるマウスにおいて、脈絡叢間質および頭部間葉に集積したミエロイド系譜細胞が、ミクログリアに分化するために脳実質へと進入する証拠をつかむ実験を並行して進めたい。その方法として、新生仔マウスの腹腔にリポ多糖を投与して全身炎症を惹起し、炎症急性期に頭蓋内組織の組織学的標本を作製する。脈絡叢間質および頭部間葉のミエロイド系譜細胞がインターロイキン1βなどの発現を伴う炎症性応答を示しながら、4~8時間程度の経過で脳実質へと移動するか否かを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した備品がキャンペーン価格となり、予定よりも低い額で入荷できたため。 次年度分として請求した直接経費は1,400,000円であり、本年度未使用分である25,165円と合わせても、大きく使用計画を変更することはない。必要試薬のうち抗体を1本分多く購入することで、実験条件検討をより余裕をもって実施できる。
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