研究課題/領域番号 |
18K07073
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鬼塚 真仁 東海大学, 医学部, 准教授 (80366012)
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研究分担者 |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 准教授 (10398753)
石井 恭正 東海大学, 医学部, 講師 (20548680)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / 活性酸素 / 酸化ストレス / 造血幹細胞移植 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
加齢とともに造血幹細胞に遺伝子変異が蓄積すると、一見無症状な状態を経た後に、骨髄異形成症候群を発症するが、この一連の段階がどのように起こり、またどういった介入によって阻止しうるのかは明らかでない。研究代表者らは、ミトコンドリア由来ROSの過剰な産生をコンディショナルに誘導する変異マウスの造血幹細胞に造血再構築ストレスを与えた場合に、老化造血/造血幹細胞機能障害が移植後早期から出現し、骨髄異形成症候群様造血を呈することを明らかにした。 加齢とともに造血幹細胞に遺伝子変異が蓄積すると、clonal hematopoiesisと呼ばれる一見無症状な状態を経た後に、骨髄異形成症候群(MDS)を発症し、血液細胞の形態異常と血球減少といった造血機能の不全を呈する。しかし、その発症機序には不明な点が多く、社会の高齢化に伴い増加している本疾患の有効な治療法の開発の妨げとなっている。その解決には、何を原因としてclonal hematopoiesisが始まり、どのような遺伝子変異が蓄積するのかを解明することが重要な鍵となる。 すでに我々は、老化によって造血幹細胞に活性酸素(ROS)が蓄積しDNAを傷害することが造血機能不全の原因であることを明らかにしている(Blood, 2011)。すなわち、造血幹細胞におけるROSの発生がclonal hematopoiesisのきっかけであり、ひいてはMDS発症の重要な原因であることが強く疑われるが、この一連の段階的発症は直接証明されてはいない。本研究ではROS蓄積→老化造血/遺伝子変異獲得→MDS発症という一連の段階を証明し、抗酸化物質による介入が遺伝子変異獲得やMDS発症を阻止しうるか検討することを目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ROSを過剰産生するSdhc変異を有するマウスおよび野生型マウスの末梢血、骨髄を経時的に評価したところ、変異マウスは3か月齢時点ではごく軽度の貧血をきたすのみだが、徐々に末梢血中リンパ球分画の減少や骨髄における造血幹細胞分画の数的増加などの加齢マウスに類似した造血が明らかになり、その後末梢血中に未熟な骨髄球系細胞や異形成のある細胞が増加し、骨髄異形成症候群様造血を呈した。ROSの蓄積からMDS様の血球変化が導かれる現象を確認出来たことは、本研究の進捗としては概ね良好と考える。
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今後の研究の推進方策 |
致死量放射線照射後のレシピエントマウスに、変異マウスの骨髄のみ、もしくはコントロールマウスの骨髄のみを移植し、血液細胞を完全にドナー由来のものに置換する系を用いて、抗酸化物質の投与が造血幹細胞におけるROS蓄積、DNA障害、そして老化造血を軽減できるかどうかについて検証を行う。また、同マウスの血液細胞がMDSで既知の遺伝子変異を獲得しているかどうか、そして抗酸化物質が遺伝子変異獲得を防ぐことができるかどうかを検証する。さらに、変異マウス由来の造血幹細胞のミトコンドリアについて電子顕微鏡観察を行い、実際にROSが蓄積した幹細胞において異常なミトコンドリアが観察できるかどうかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用の消耗品等で若干の残金が残りましたが、概算より安価であったため残金が生じました。次年度においても重要な研究事案をこのテーマで予定していますので、残金を消耗品等に充当しての使用する予定です。
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