生後早期よりシェーグレン症候群(SS)様病態を呈するSS疾患モデルマウスを用いてT細胞による唾液腺組織障害機構の検討を行なってきた。これまでの検討から、本マウスにおけるSSの病態形成において、頸部リンパ節に病原性T細胞が集積していることが明らかとなっている。本研究では、SS疾患モデルマウスを用いて、SS発症初期の唾液腺における病原性T細胞の活性化機構と唾液腺への炎症性細胞浸潤機構の解析を行なった。 血球系細胞特異的に核内転写制御因子SATB1 (Special AT-rich sequence binding protein-1)を欠損するSATB1 cKOマウスをSS疾患モデルとして用いた。SATB1 cKOマウスの頸部リンパ節T細胞、または唾液腺に浸潤しているT細胞を分離し、サイトカイン産生能などの機能解析を行なった。 SATB1 cKOマウス唾液腺にはIFN-γ、またはIL-17産生CD4陽性T細胞が存在し、特にIFN-γ産生細胞が多く認められた。抗IFN-γ抗体、または抗IL-17抗体をSATB1 cKOマウス腹腔内へ投与し活性を中和したところ、ともに唾液分泌機能障害の改善は認められなかった。しかし本マウスにおいてSS発症初期マーカーとなるトリプトファン(Trp)の代謝亢進が抑制され、これらのサイトカインがSS様病態形成に関与する可能性が示唆された。さらに、抗CD4抗体、または抗CD8抗体をSATB1 cKOマウス腹腔内へ投与しこれらの細胞を除去したところ、CD4陽性細胞の除去により唾液分泌機能障害の有意な改善が認められた。ただしCD8陽性細胞の除去でも、唾液分泌機能障害は弱く改善される傾向があった。これらの結果から、SATB1 cKOマウスのSS様病態形成には、CD4陽性T細胞が重要であることが示唆された。
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