慢性腎臓病発症の鍵となる因子とシグナル伝達経路の研究：網羅的オミックス解析の応用

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 18K07076
• 研究機関: 藤田医科大学
• 研究代表者: 長尾 静子 藤田医科大学, 疾患モデル教育研究サポートセンター, 教授 (20183527)
• 研究分担者: 釘田 雅則 藤田医科大学, 疾患モデル教育研究サポートセンター, 講師 (50440681) ; 山口 太美雄 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (70536292)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 多発性嚢胞腎 / 慢性腎臓病 / オミックス解析 / 情報伝達経路 / リン酸化プロテオミクス

研究実績の概要

慢性腎臓病はその治療および生命維持のための人工透析、血圧管理および貧血の治療等に莫大な費用を要するため、発症年齢と進行速度を遅延させる必要がある。慢性腎臓病の原疾患として腎臓の遺伝性疾患で最も発症率が高い多発性嚢胞腎症が挙げられる。これまで、申請者らは、多発性嚢胞腎症モデル動物における細胞内cAMPの異常な増加に伴うシグナル伝達経路の異常な活性化やPPAR gammaを介する線維化機構の活性化等を解明してきた。
加えて最近、申請者らは、多発性嚢胞腎症モデル動物の腎臓を用いたメタボロミクス解析とプロテオミクス解析いわゆるオミックス解析およびリン酸化プロテオミクス解析から様々な因子の増加と減少を発見した。その中でも病態進行が進むにつれて炎症反応に関わる因子が変化することから、慢性腎臓病に至る過程に炎症反応が大きく関与することが考えられる。
そこで、本研究では、オミックス解析およびリン酸化プロテオミクス解析から得られた因子、特に炎症反応に関わる因子の変化を定量的および腎臓内の分布を解析することで病態の重症化に関わる因子とシグナル伝達経路のさらなる解明を行いヒトの予防医学・先制医療に寄与することを目的とする。初年度では、網羅的解析結果によって得られた因子をウエスタンブロット解析し定量した。さらに、より腎機能が悪化する食塩感受性高血圧モデルラットおよび高血圧を併発する多発性嚢胞腎症の新規モデルラットの網羅的解析を行った。前年度では、これらの網羅的解析をもとに多発性嚢胞腎症モデルラット、食塩感受性高血圧モデルラットおよび高血圧を併発する多発性嚢胞腎症の新規モデルラットにおける高血圧あるいは多発性嚢胞腎症に共通する因子を明らかにすると共に、ウエスタンブロット解析および免疫組織化学染色を行い、それぞれの疾患に関与する因子の特定作業を行い、有力な候補を複数選択するに至った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定した通り、多発性嚢胞腎症モデルおよび食塩感受性高血圧の背景を有する多発性嚢胞腎症モデルからオミックス解析結果を得るとともに、病態進行に関わると考えられる因子の定量と分布を行うことができた。

今後の研究の推進方策

病態進行に関わると考えられる因子の定量と分布をさらに行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

定量に必要な抗体を厳選していた。
抗体購入に充てる予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Gut microbiome-derived phenyl sulfate contributes to albuminuria in diabetic kidney disease. (2019)
  • 著者名/発表者名: Kikuchi K, Saigusa D, Kanemitsu Y, Matsumoto Y, Thanai P, Suzuki N, Mise K, Yamaguchi H, Nakamura T, Asaji K, Mukawa C, Tsukamoto H, Sato T, Oikawa Y, Iwasaki T, Oe Y, Tsukimi T, Fukuda NN, Ho HJ, Nanto-Hara F, Ogura J, Saito R, Nagao S, (32), Abe T.
  • 雑誌名: Nat Commun. 巻: 10 ページ: 1835
  • DOI: 10.1038/s41467-019-09735-4.
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] Voxel-based morphometry of images acquired through SBF-SEM of primary cilia from a rat kidney collecting duct. (2019)
  • 著者名/発表者名: Sei Saitoh, Kanako Kumamoto, Nobuhiko Ohno, Shizuko Nagao.
  • 学会等名: The 13th Japan-China Joint Seminar on Histochemistry and Cytochemistry, 2019, Kobe, Hyogo, Japan, Sep 19-21.
  • 国際学会
• [学会発表] Development and implantation of novel morphometric 3D capsule device to constrain structural change of polycystic kidney: a feasibility study in a rat model. (2019)
  • 著者名/発表者名: Kyongtae T. Bae#, Kanako Kumamoto#, Aya Yoshimura#, Masanori Kugita, Shigeo Horie, Tamio Yamaguchi, Junu T. Bae, Shizuko Nagao (# equal author)
  • 学会等名: Kidney week, 2019, Washington, DC, U.S.A., Nov 5-10.
  • 国際学会
• [学会発表] Comparison study of calorie matched high fat and high sugar diets on renal injury with lysosomal dysfunction in pre-diabetic mice. (2019)
  • 著者名/発表者名: Aya Yoshimura#, Tamio Yamaguchi#, Masanori Kugita#, Kanako Kumamoto, Kazuya Shiogama, Naomichi Ogitsu, Toshihiro Miura, Misao Yoneda, Yoichi Nagamura, Shizuko Nagao (# equal author)
  • 学会等名: Kidney week, 2019, Washington, DC, U.S.A., Nov 5-10.
  • 国際学会
• [学会発表] ネフロン癆モデル動物pcyマウスの多発性嚢胞腎における代謝産物の網羅的解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 釘田 雅則、熊本 海生航、吉村 文、中嶋 和紀、高橋 和男、湯澤 由紀夫、長尾 静子
  • 学会等名: 第66回日本実験動物学会総会、福岡、2019年5月15日～17日、福岡国際会議場
• [学会発表] 種類の繊毛病モデル動物を用いた多発性嚢胞腎における代謝産物の網羅的解析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 釘田 雅則、熊本 海生航、吉村 文、中嶋 和紀、高橋 和男、湯澤 由紀夫、長尾 静子
  • 学会等名: 第62回日本腎臓学会学術総会、名古屋、2019年6月21日～23日、名古屋国際会議場
• [学会発表] 常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患（ARPKD）モデル動物における一次繊毛長と形態に治療が与える影響について (2019)
  • 著者名/発表者名: 熊本 海生航、齊藤 成、大野 伸彦、服部 宣子、釘田 雅則、吉村 文、長尾 静子
  • 学会等名: 第62回日本腎臓学会学術総会、名古屋、2019年6月21日～23日、名古屋国際会議場
• [学会発表] NG2活性化による腎髄質ペリサイト機能温存とラットPCK多発性嚢胞腎モデルにみられる糸球体病変の軽減 (2019)
  • 著者名/発表者名: 熊本 海生航、釘田 雅則、吉村 文、藤本 清秀、千原 良友、小島 直人、東原 英二、長尾 静子、石橋 道男
  • 学会等名: 第62回日本腎臓学会学術総会、名古屋、2019年6月21日～23日、名古屋国際会議場
• [学会発表] 腎性尿崩症様病態を示す新規トランスジェニックラット (2019)
  • 著者名/発表者名: 吉村 文、熊本 海生航、釘田 雅則、長尾 静子
  • 学会等名: 第62回日本腎臓学会学術総会、名古屋、2019年6月21日～23日、名古屋国際会議場
• [学会発表] 多発性嚢胞腎症モデル動物PCKラットにおける嚢胞形成関連代謝産物の探索 (2019)
  • 著者名/発表者名: 釘田 雅則、熊本 海生航、吉村 文、長尾 静子
  • 学会等名: 第90回東海実験動物研究会、名古屋、2019年6月29日、名古屋市立大学
• [学会発表] 常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)モデル動物の腎臓におけるG protein-coupled receptorの刺激が一次繊毛長と形態に与える影響について (2019)
  • 著者名/発表者名: 熊本 海生航、齊藤 成、大野 伸彦、服部 宣子、釘田 雅則、吉村 文、長尾 静子
  • 学会等名: 第90回東海実験動物研究会、名古屋、2019年6月29日、名古屋市立大学
• [学会発表] Sox2/CD63-GFPトランスジェニックラットの腎病態について (2019)
  • 著者名/発表者名: 吉村 文、熊本 海生航、釘田雅則、長尾 静子
  • 学会等名: 第90回東海実験動物研究会、名古屋、2019年6月29日、名古屋市立大学
• [学会発表] 3D architectures of primary cilia of collecting duct cells in rat kidney revealed by SBF-SEM (2019)
  • 著者名/発表者名: 齊藤 成、熊本 海生航、大野 伸彦、高橋 和男、長尾 静子
  • 学会等名: 第79回日本解剖学会中部支部学術集会、松本、2019年10月19日～20日、松本歯科大学
• [学会発表] エクソソームマーカーCD63-GFPを腎臓で発現するトランスジェニックラット (2019)
  • 著者名/発表者名: 吉村 文、熊本 海生航、釘田 雅則、大平圭悟、落谷孝広、長尾 静子
  • 学会等名: 第6回日本細胞外小胞学会、東京、2019年10月24日～25日、国立がん研究センター研究所
• [学会発表] SBF-SEM画像によるラット腎臓組織集合管主細胞一次繊毛長のボクセル計測法 (2019)
  • 著者名/発表者名: 齊藤 成、熊本 海生航、大野 伸彦、高橋 和男、長尾 静子
  • 学会等名: 第125回日本解剖学会学術集会、（紙上開催）
• [備考] 藤田医科大学疾患モデル科学
  • URL: http://www.fujita-hu.ac.jp/CAMHD/LAS/TOPICS.html