研究課題/領域番号 |
18K07078
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
安藤 祐吾 関西医科大学, 医学部, 講師 (50388427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | miR-21 / IBD / PDCD4 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)患者および、IL-10 knock out マウス、デキストラン硫酸(DSS)誘導マウス腸炎モデルなどの様々なIBDモデルマウスの腸管粘膜においてmiR-21が高発現していることが報告されている。しかし、生体内でmiR-21が大腸炎の発症および慢性化にどのような役割を果たしているのかについて、未だ明らかにされていない。本研究ではIBDモデルマウスであるdominant negative TGF-β Receptor II (dnTGF-βRII)マウスを用いて、miR-21が in vivo, in vitro においてどのような役割を果たしているか検証する。 初年度である平成30年度は、dnTGF-βRIIマウスおよびmiR-21 knock out (miR-21KO) マウスをアメリカ合衆国のThe Jackson laboratoryより購入(輸入)し、動物飼育センターでの飼育繁殖を開始した。マウス購入後は、genetic backgroundがB6;129SであるmiR-21KO mouseをdnTGF-bRIIマウスと同じC57BL/6(B6)へ置き換える為にback cross (The Jackson LaboratoryのSpeed Congenic Serviceを利用)を開始し、現在、N10まで到達している。現在、N10のdnTGF-bRIIマウスとmiR-21KOマウスとの掛け合わせを行なって、マウスの数を増やしている段階である。In vitroの実験では、dnTGF-βRIIマウスおよびB6マウスの脾臓および腸間膜リンパ節からCD4+T細胞を分離回収し、miR-21発現量およびmiR-21のtarget geneの一つであるProgrammed cell death 4 (PDCD4)発現量をRT-PCR法を用いて測定した。その結果、dnTGF-βRIIマウスのCD4+T細胞ではmiR-21が高発現していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験は、IBDモデルマウスにおいてmiR-21がどのような役割を果たしているかを検証する実験である。したがって、IBDモデルマウスであるdnTGF-βRIIマウスとmiR-21KOマウスを掛け合わすことにより、まずはmiR-21-/-dnTGF-βRIIマウスを作成する必要がある。dnTGF-βRIIマウスおよひmiR-21KOマウスは、The Jackson laboratoryより購入可能であるが、genetic back groundが異なるマウスである為、これらのマウスを掛け合わせる前にback crossして、同じgenetic back groundへ変換する必要がある。その為、初年度はback crossに約1年前後の時間を要すると予測された。予定通り、N10までback crossは完了し、dnTGF-βRIIマウスとmiR-21KOマウスからmiR-21-/-dnTGF-βRIIマウスが完成した。現在、n数を増やす為に引き続きbreedingを継続している。予定では今年8月頃にマウスを屠殺して解析を開始し、11月頃には論文投稿の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
miR-21-/-dnTGF-βRIIマウス、dnTGF-βRIIマウス、miR-21KOマウスを各12匹ずつ作成する。マウスは12週齢と24週齢で屠殺し、血清、各臓器を採取し、各種assayへ用いる。採取した組織の一部で組織標本を作成し、炎症細胞浸潤の程度をスコア化する。次に、マウスから採取した脾臓と腸間膜リンパ節は、比重遠心法を用いて単核細胞を分離し、細胞表面マーカーで染色してT細胞活性化を評価する。また、CD4+T細胞とCD8+T細胞によるサイトカイン産生能を調べる為に、炎症性サイトカインをintracellular stainingにより評価する。CD4+/CD8+T細胞は、比重遠心法で回収された単核細胞を用いて、positive selectionによりCD4+/CD8+T細胞を回収する。腸管粘膜内の単核細胞の回収方法は、コラゲナーゼを用いて腸管組織を消化分解することにより単核細胞を分離回収する。腸管組織内のサイトカインは、大腸粘膜をホモジナイズし、CBA Cytokine kitを用いて測定する。炎症とmiR-21の関連性については、miR-21発現量および各種サイトカインのmRNA発現量をRT-PCR法を用いて定量し解析する。次に、miR-21の標的遺伝子であるPDCD4は、RT-PCR法およびWestern blotting法を用いてPDCD4のmRNA発現量およびタンパク質量を測定する。また、miR-21が細胞増殖やアポトーシスに及ぼす影響について、CFSE Cell Proliferation assayおよびAnnexin V binding assayにより検証する。マウスの全身状態および生存率を評価するために、体重、生存率、各臓器の病理組織、腸管長、腸管重量を測定し、全身および腸管局所の炎症の程度を客観的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス作成の進捗状況は概ね良好であるが、昨年度中にマウスを屠殺して解析する段階まで到達できなかった為、必要と思われる抗体や検査キットの購入が次年度に持ち越しとなった。マウスのback crossやmatingは、ストレスや様々な外的要因により予定が遅れることは想定内であるが、次年度中に屠殺して解析を完了させることは可能と考える。
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