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2020 年度 実施状況報告書

多段階発がん過程におけるMeis1経路の網羅的機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K07080
研究機関千葉県がんセンター(研究所)

研究代表者

若林 雄一  千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 実験動物研究部, 部長 (40303119)

研究分担者 磯貝 恵理子  千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 実験動物研究室, 上席研究員 (40300917)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード化学発がん / パピローマ / 扁平上皮がん
研究実績の概要

マウスに誘導した良性腫瘍パピローマ、皮膚扁平上皮がん、コントロールとして正常皮膚からクロマチンを分離し、anti-Meis1抗体を用いてChIP sequencingを行った。その結果、悪性腫瘍において48のMeis1結合ピークが検出された。次に、これらのピークがシス領域に存在すると考えられる遺伝子を抽出したところ10個の遺伝子が検出された。これらの遺伝子の中からStk25遺伝子の機能解析から行った。Stk25のノックダウン細胞株を皮膚扁平上皮がん細胞のB9を用いて作製した。するとこの細胞株はMeis1ノックダウン細胞株と同様に細胞遊走と増殖能に異常を来すことが判明した。さらにプロモーター領域をクローニングしてルシフェラーゼアッセイを行った。Meis1の全長cDNA配列とStk25のプロモーター領域を連結させたルシフェラーゼコンストラクトを同時にB9細胞にトランスフェクションしたところ、強いルシフェラーゼ活性が検出され、Stk25がMeis1の下流で機能することが確認された。Meis1ノックダウン細胞株にStk25を高発現させたところ、遊走能にはそれほど影響を与えなかったが、増殖能はレスキューされるという結果が得られた。引き続き、Meis1ノックダウン細胞株を正常皮膚ケラチノサイト由来細胞C5N、皮膚扁平上皮がん由来細胞B9、D3の3種類の細胞株を用いて作成し、RNA sequencingを行った。コントロール細胞とノックダウン細胞との間で発現量が2倍以上変動した遺伝子を抽出することに成功した。それらの中でもMeis1の発現減少は表皮細胞株においてサイトケラチンの発現上昇と、EMT(Epithelial-Mesenchymal Transition)関連遺伝子の発現減少を誘導することがわかった。さらにそれらのデータ解析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

RNAシーケンシングの結果、コントロール細胞とノックダウン細胞との間で発現量が2倍以上変動した遺伝子を抽出し、表皮細胞株において発現上昇が見られたサイトケラチンと、発現減少が見られたEMT(Epithelial-Mesenchymal Transition)関連遺伝子についてさらに解析を行った。具体的には、上皮性細胞マーカーにも用いられる高分子型のKeratin5/6a/6b/14/15 がC5N およびB9-Meis1 ノックダウン細胞株 で発現上昇していた。さらにEMT 関連転写因子のSnai1/2 や間葉系細胞マーカーのVimentin がMeis1 ノックダウン細胞株で で発現低下する傾向が認められた。さらに、すでに取得済みであった多段階悪性化過程の Meis1-ChIP-seq データと併せて解析した結果、Krt5 および Krt15 において正常皮膚および 早期良性腫瘍で両遺伝子の上流にリードピークが検出された。一方、EMT 関連転写因子Snai2 においても同様に検索した結果、早期良性腫瘍においてピークが検出された。そこでKrt5、Krt15 およびSnai2 の5’UTR 上流の配列を検索した結果、1 kb 以内にMeis1 結合モチーフのコンセンサス様配列がそれぞれ1つ以上確認できた。これらのことか ら、Meis1 が直接的にKrt5、Krt15 およびSnai2 の発現調節をしていることが予測された。すなわち、Meis1存在下では腫瘍はEMTの方向に向かい、より悪性化しやすくなるのに対し、Meis1非存在下ではSnailの発現が減少し、Krt5、Krt15の発現が上昇することにより、腫瘍の悪性化が阻害されることが考えられた。

今後の研究の推進方策

ChIP sequencing、およびRNAsequencingデータの解析をさらに進めると同時に、得られたMeis1経路で機能すると考えられる遺伝子の発現変動のvalidatioや機能解析を進める。さらにMeis1コンデイショナルノックアウトマウスとCreマウスを交配してできたマウスの表現型解析や発がん実験を進める。

次年度使用額が生じた理由

データ解析に時間を費やしたため、予想以上に消耗品等の購入に予定した経費を使用しなかったこと、手持ちの試薬等があったこと等が理由としてあげられる。最終年は消耗品類を購入し予定している課題を遂行したいと考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Pak1 maintains epidermal stem cells by regulating Langerhans cells and is required for skin carcinogenesis.2020

    • 著者名/発表者名
      1.Okumura K, Saito M, Yoshizawa Y, Ito Y, Isogai E, Araki K, Wakabayashi Y.
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 39 ページ: 4756-4769

    • DOI

      10.1038/s41388-020-1323-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] CENP-50 is required for papilloma development in the two-stage skin carcinogenesis model.2020

    • 著者名/発表者名
      2.Saito M, Kagawa N, Okumura K, Munakata H, Isogai E, Fukagawa T, Wakabayashi Y.
    • 雑誌名

      Cancer Science.

      巻: 111 ページ: 2850-2860

    • DOI

      10.1111/cas.14533.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The role of calcium metabolism in keratinocyte differentiation.2020

    • 著者名/発表者名
      Okumura K, Wakabayashi Y.
    • 雑誌名

      Trends in Cancer Research.

      巻: 14 ページ: 45-47

    • 査読あり
  • [学会発表] MSM由来ES細胞を用いた発がん抵抗性遺伝子座の解析2021

    • 著者名/発表者名
      若林雄一
    • 学会等名
      2020年度先端モデル動物プラットフォーム成果発表会
    • 招待講演
  • [学会発表] ランゲルハンス細胞のPak1遺伝子は皮膚幹細胞の維持に関与し多段階皮膚発がんを制御する2020

    • 著者名/発表者名
      奥村和弘、斎藤慈、吉澤康博、磯貝恵理子、若林雄一
    • 学会等名
      第79回日本癌学会学術総会
  • [備考]

    • URL

      https://www.pref.chiba.lg.jp/gan/kenkyujo/soshiki/jikkendobutsu/index.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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