メラノコルチン受容体(MCR)のうち、MC4Rは摂食抑制やエネルギー代謝、MC1Rは色素合成や抗炎症・免疫に関与しており、全体として肥満や生体防御異常に関わっている。これらのインバースアゴニストであるAgoutiの過剰発現モデルによってマウスの膵臓発がんが促進されたことより、本研究では、MC1Rの機能低下と膵発がんとの関わりについて検討を行なった。R4年度は、以下について検討を行った。 マウス膵臓発がんモデルとMc1r変異を有するMc1r<e/e>マウスとの交配実験を終了した。発がん頻度は、雄ではMc1rの野性型、ヘテロ変異型では差は見られず、ホモ変異ではやや低くなる傾向にあり、雌ではMc1rの野性型に比べ、ホモ変異型、ヘテロ変異型でやや発がん頻度が高まったが、いずれも有意差は認められなかった。ヘテロ変異型に比べ、ホモ変異型型、野性型の出生率がメンデルの法則より低く、個体数を多数集めるのが困難であった。 Mc1r<e/e>マウスは、肥満モデルのAyマウスと同様に毛色は黄色を呈するが、肥満はせず、加齢による膵臓の脂肪浸潤も認められなかった。高脂肪食によって肥満させ、膵臓の脂肪浸潤が起きるかどうかを検討したが、野性型と同レベルであった。 Agoutiによる膵臓発がん促進は、雌で有意に見られており、Mc1rの機能低下も一部関わっている可能性はあるが、肥満を引き起こすことが知られているMc4rの阻害の影響が大きいと考えられ、今後、Mc4rの阻害や、Mc4rとMc1rの同時阻害の膵臓発がんへの影響を検討していきたいと考えている。
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