研究課題
筋ジストロフィーの根治療法として骨格筋幹細胞である筋衛星細胞を移植する方法が考えられるが、生体外で筋衛星細胞の未分化な状態を保持したまま培養することが難しく、移植に十分な数の筋衛星細胞を得られないことが課題となっている。この問題を解決するには未分化維持機構の解明が必要である。我々はこれまでに転写因子Klf5を欠損した筋衛星細胞は未分化能を維持する能力が高いことを見出している。本研究ではKlf5の機能抑制を基軸とした筋衛星細胞の未分化維持機構を明らかにすることを目的とした。野生型筋衛星細胞とKlf5欠損筋衛星細胞の増殖期から分化誘導後にかけて経時的にRNAを抽出し、RNA-seqによる解析を行った。GO解析の結果、Klf5欠損細胞では骨格筋の構造蛋白遺伝子群やMYOGENESIS、Muscle cell developmentといった遺伝子群の発現が顕著に抑制されている一方で、NFkBを介したTNFaシグナルやIFNgシグナル関連遺伝子群の発現が亢進していた。Fuらは炎症性サイトカインがin vitroでの筋幹細胞の長期的維持に有効であることを報告しており(Cell Res25:655-673, 2015)、Klf5欠損細胞ではこれらのシグナルが亢進することによって高い未分化性を保持していることが考えられた。また、Klf5抗体、Pax7抗体を用いてChIP-seqを行い、増殖期の筋衛星細胞におけるこれら転写因子のターゲットの同定を試みた。しかしながら、増殖期の筋衛星細胞ではKlf5の発現が低く、検出が難しいこと、また、現在市販されているPax7抗体では巧く反応せず、ChIP-seqを行うことができなかった。
3: やや遅れている
申請時の計画通りKlf5欠損細胞を用いてRNA-seqを行った。一方、ChIP-seqに関しては筋衛星細胞のKlf5の発現量やPax7抗体の反応性などの問題により難航している。
これまでの結果から、Klf5欠損細胞では炎症性サイトカインのシグナルが亢進している事が考えられた。今後はその詳細な分子機構を解析すると共に、我々が見出した、レチノイン酸アゴニストによる筋衛星細胞の未分化性維持機構も明らかにする。また、近年ラミニン511-E8フラグメントが近影細胞の未分化性を維持することが報告された(Stem Cell Rep10: 1-10, 2018)。そこで、筋衛星細胞の未分化性を保持する培養法の開発のため、ラミニンを含む細胞外基質の検討を行い、筋衛星細胞の未分化性を維持する培養系の開発を目指す。
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