研究実績の概要 |
インドネシア・スンバ島のワインヤップ地域の10家族の住民から提供された糞便材料と家畜動物、特にブタ・ニワトリ・ヤギ・水牛から糞便材料を採取し、糞便から直接抽出したDNA材料を使い、ブラストシスチスの人獣共通感染性について評価を行った。 PCR増幅の有無により住民の約45%、家畜のブタ・ヤギからは約85%、ニワトリからは約60%と高率にブラストシスチスが検出されたが、水牛からは検出されなかった。 人獣共通感染性については、カラム型DNA抽出キットを使い、同一カラムから連続3回抽出を行い、糞便内に含まれるブラストシスチスを半定量的に評価した。すなわち、さまざまなサブタイプ(ST)に重複感染していても、個々のSTを特異的に増幅できる本研究室で開発したST特異的PCRプライマーを用いて、個々の抽出DNAに含まれるSTをPCR増幅し、糞便内に含まれるブラストシスチスの量を把握した。 その結果、住民の体内でブラストシスチスが増殖していると判断できたのは、ST1, ST2, ST3であった。一方、家畜動物の体内でブラストシスチスが増殖していると判断できたのは、ブタでST5、ヤギでST1, ST5、ニワトリでST6, ST7であり、ST1のみが住民とヤギの両方でブラストシスチスが増殖していると判断できた。このST1について、特異的プライマーで増幅される約1200bpの塩基配列を解読して両者を比較したところ、二種類の遺伝的に異なるブラストシスチスの存在が明らかとなった。個々の住民からは片一方のブラストシスチスのみしか検出されなかったが、ヤギの半数からは両方の異なるブラストシスチスが検出された。この結果は、ヒト由来のST1のブラストシスチスがヤギに感染しうることを示していると考えられた。
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