研究課題/領域番号 |
18K07088
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
坂口 美亜子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50400651)
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研究分担者 |
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70275733)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サルマラリア / 感染赤血球 / 接着現象 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、サルマラリア原虫Plasmodium knowlesiのヒト感染者の重篤化に関与するP. knowlesi感染赤血球の接着機構を明らかにするため、ヒト血管内皮細胞に結合する原虫由来の接着分子を同定することである。 まず最初に、サル赤血球に感染したP. knowlesiのヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対する接着実験を繰り返し行ったところ、アッセイ7、8回目で約800感染赤血球/100 HUVECsという強い接着現象が認められた。 次に、このように選抜した接着性のP. knowlesi及びアッセイ前の非接着P. knowlesiについて同調培養を行い、リング前期及び後期、及びシゾント後期の原虫を回収した。そして、それぞれのサンプルからmRNAを抽出し、ライブラリ作製後にRNA-seqを行った。このようにして得られた遺伝子配列についてトランスクリプトーム解析を行ったところ、HUVECによる選抜後の接着性P. knowlesiにおいて、アッセイ前の非接着P. knowlesiと比べて約200-500倍に転写量が増えているSICAvar遺伝子を同定することができた。 SICAvarは原虫ゲノムに約100個コピーされている、感染赤血球表面に発現する接着分子である。上記の研究結果から、多数のSICAvarのうちこのSICAvarがHUVECへの接着に関与している可能性が示唆された。 そこで、同定したSICAvar遺伝子について遺伝子導入により強制発現する組換え原虫を作製するため、エピトープタグ配列とSICAvarの遺伝子配列を融合したプラスミドを作製し、P. knowlesiに対してトランスフェクションを行った。今後はこのように作製した組換え原虫の感染赤血球においてSICAvarの局在を調べ、HUVECに対する接着実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接着実験を繰り返し行うことにより、接着性P. knowlesiを選抜することができた。また、接着性及び非接着性P. knowlesiのトランスクリプトーム解析の結果から、P. knowlesiのヒト血管内皮細胞への接着に関与すると考えられる分子を同定することができた。 この同定したSICAvarについて強制発現する組換え原虫を現在作製しており、順調に次の段階の実験に進むことが可能となっている。 またヒト赤血球に感染可能なP. knowlesiは現在長期培養できるようになったため、同様の実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在作製している組換え原虫について、強制発現しているSICAvarの感染赤血球における局在を調べるため、タグ抗体を用いて共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡で観察を行う。さらに、このSICAvarが感染赤血球の表面に露出しているかどうか、フローサイトメーターで確認する。 また、このSICAvarについてノックアウトにより発現しない組換え原虫を作製し、該当分子が確実に発現していないかどうかを確認する。 そして、ヒト赤血球に感染可能なP. knowlesiについて培養状況に問題がなければ、同様の接着実験や接着性P. knowlesiの選抜、接着に関与すると思われる原虫由来の分子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
サル赤血球によるP. knowlesiの培養や実験は問題ないが、ヒト赤血球に適応しているP. knowlesiについては長期培養は可能であるものの同調実験や接着実験においては原虫が弱ってしまい培養が上手く継続できない場合が見られた。 上記のことから、ヒト赤血球に適応しているP. knowlesiを対象として予定としていた培養器具や培地の使用額を次年度に回し、条件検討を行って実験を行うつもりである。
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