研究課題
本年度は最終年度であり、実臨床検体をもちいて、抗体検査の感度と特異度を決定した。それによると、動物由来の回虫類感染症(トキソカラ症またはブタ回虫症、抗原は幼虫ES抗原)は感度0.97、特異度0.75、肺吸虫症(抗原は虫体粗抗原)は感度0.97、特異度0.97、肝蛭症(抗原は組換えCat L1)は感度1.00、特異度0.91、顎口虫症(抗原は虫体粗抗原)は感度0.55、特異度0.92、マンソン孤虫症(抗原は虫体粗抗原)は感度1.00、特異度0.98、糞線虫症(抗原は組換えNIE)は感度0.90、特異度0.99であった。以上より、抗体検査の特異度はどの虫種においても優れた値を得ることができたが、顎口虫では十分な感度が得られないことがわかった。次に寄生虫症の症状と検査結果の関係では、患者の症状・症候を以下の17項目[好酸球増多または好酸球浸潤、虫卵・虫体(様異物)の検出、胸部異常陰影または胸部症状、腹部症状、肝異常陰影、肝機能障害、浮腫、皮下腫瘤、皮膚爬行疹、爬行疹以外の皮疹、頭蓋内病変、髄膜炎、脊髄炎、ぶどう膜炎、不明熱、家族・友人に患者発生、その他]にまとめ、どのような症状・所見があれば寄生虫症である的中率が高くなるかを検討した。その結果、胸部症状、肝異常陰影、皮膚爬行疹、皮下腫瘤では寄生虫症と診断される割合が高く、特に好酸球増多をともなうと寄生虫症である率が高くなった。症例数として最も多い胸部異常陰影で約50%、肝異常陰影では約75%が寄生虫症と診断された。原因寄生虫は胸部異常陰影が動物由来の回虫症または肺吸虫症、肝異常陰影の原因は動物由来回虫症、肝蛭症、肺吸虫症であり、これら3種類の寄生虫抗原の組み合わせで、かなりの程度の寄生虫症を診断できることがわかった。反対に頭蓋内病変、髄膜炎、不明熱では寄生虫症は否定的であることが多かった。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件)
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