研究課題/領域番号 |
18K07094
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井上 信一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20466030)
|
研究分担者 |
小林 富美恵 麻布大学, 生命・環境科学部, 客員教授 (20118889)
新倉 保 杏林大学, 医学部, 講師 (30407019)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マラリア / γδ T細胞 |
研究実績の概要 |
マラリア患者において、γδ T細胞はマラリア原虫感染赤血球に対して免疫応答する細胞の中で非常に高い反応性をもつ細胞であることから、マラリア防御免疫やマラリア免疫病態におけるγδ T細胞の役割を解明することは極めて重要である。最近、マラリア原虫に頻回感染した患者では、このγδ T細胞が “ γδ T細胞疲弊 ”という現象を起こしていることを示唆する報告が出された。しかし、この “ γδ T細胞疲弊 ”という表現型をもった細胞が、マラリアに対してどの様な影響を及ぼしているのかについては謎のままである。極めて最近、申請者は、マウスマラリアモデルにおいても、この “ γδ T細胞疲弊 ” という現象がみられることを報告した。本研究は、マウスマラリアモデルを駆使して、新たに発見されたこのγδ T細胞疲弊という現象がマラリア免疫においてどの様な働きを持っているのか、その全容解明を目的とする。 今年度は、各感染ステージ(ナイーブ、活性化期、疲弊期)におけるVγ1+Vδ6.3 γδT細胞のマイクロアレイ解析を進めた。データ解析により、関連候補遺伝子(転写因子)を絞ることができた。このうち、阻害剤があるものに関して、投与実験を行った。その結果、感染14日目の疲弊期におけるγδT細胞の抑制性レセプターの発現低下が見られたことから、この候補遺伝子が真のγδT細胞疲弊に関与する遺伝子であることが強く示唆された。今後は、レンチウイルスベクターを用いて候補遺伝子の検証を進める予定である。さらに、γδ T細胞疲弊がマラリア防御免疫に与える影響の解明するために、Rag2KOマウスを用いた移入実験を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は所属の異動により研究遂行の遅れが否めなかったが、今年度は計画に基づき順調に遂行できた。まず、Vγ1+Vδ6.3 γδT細胞のマイクロアレイのデータ解析により、関連候補遺伝子(転写因子)を絞ることができた。このうち、阻害剤による検証により、1つの候補遺伝子が真のγδT細胞疲弊に関与する遺伝子であることが強く示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、計画通りレンチウイルスベクターを用いてγδT細胞疲弊の候補遺伝子の検証を進める予定である。さらに、今後、γδ T細胞疲弊がマラリア防御免疫に与える影響を解明するために、Rag2KOマウスを用いた移入実験を進めるが、ドナーをnaiveマウスの脾細胞にした場合、ドナー免疫細胞の定着率が低いために、弱毒株マラリア原虫でも防御できなくなってしまう可能性もある。その対策として、Rag2 KOマウスにX線照射をして脾臓細胞の生着率を上げる他、TCRδ KOmiceを使った移入実験系などレシピエントを変更する代替実験も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも安価なマイクロアレイが発売されたことが大きい。何れにせよ、これから候補遺伝子の検討に多数の試薬(抗体、レンチウイルス構築関連試薬、siRNA)の購入やマウスの購入などに使用されるので、最終的には計画通りの使用となる予定。
|