研究課題
本研究では、我々が最近発見した細菌の新規活性イオウ分子産生酵素(CARS)の機能に焦点をあて、細菌が産生する活性イオウ分子のオートファジー抑制作用と細胞内殺菌回避における役割を明らかにし病原性発現との関連を解明することを目的としている。本年度は、細菌の活性イオウ分子産生メカニズムの解析と活性イオウ分子によるオートファジー制御の解析を行った。大腸菌のシステインtRNA合成酵素(EcCARS)について質量分析(LC-MS/MS)を用いたポリスルフィド定量システムにより解析した結果、真核生物のCARSと同様に、システインを基質としてシステインパースルフィドを生成することが分かった。また、我々が既に作製しているネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)の主要な硫化水素(H2S)産生酵素であるチオ硫酸還元酵素(Phs)および亜硫酸還元酵素(Asr)の欠損株の活性イオウ分子の産生レベルを解析した結果、野生株と比べて各欠損株において、システインパースルフィド、グルタチオンパースルフィドをはじめとする各種活性イオウ分子産生量の有意な減少を認めた。さらに、マウスマクロファージ様RAW264.7細胞にネズミチフス菌の野生株および活性パースルフィド生成変異株を感染させ、オートファジー誘導と細胞内増殖を解析した結果、細菌由来の活性イオウ分子がオートファジーを抑制することが分かった。これらの結果から、ネズミチフス菌が産生するシステインパースルフィドなどの活性イオウ分子は、感染マクロファージ内におけるオートファジー誘導制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画で予定していた細菌の活性イオウ分子産生メカニズムの解析および活性イオウ分子種のオートファジー制御の解析について、ほぼ計画どおり実験を実施することができ、細菌由来の活性イオウ分子による介したオートファジー誘導制御の研究成果が得られた。
研究遂行上の問題はなく、当初の研究計画は変更なく研究を推進していく予定である。また、細菌の新規活性イオウ分子産生系の生理機能解析において当初計画よりも大きな成果が得られるものと考えている。
(理由)実験を効率よく行うことにより、予定よりも少ない経費で当初研究計画を実施し研究成果を挙げることができたため。(使用計画)活性イオウ分子によるオートファジー制御機構の詳細な解析、特に新規活性イオウ分子産生系の役割についての解析等、本研究の目的達成のためのさらに詳細な解析を行うために使用する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 8件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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