研究課題/領域番号 |
18K07102
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高屋 明子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (80334217)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サルモネラ / ミエロイド細胞 / 腹腔特異的マクロファージ |
研究実績の概要 |
細胞内寄生性を有するサルモネラは、脾臓等のミエロイド細胞内で生存し、持続感染する。ミエロイド細胞の多くは短命であるため菌は細胞間を移動すると考えられるが、その詳細は明らかではない。研究代表者は昨年度までに、サルモネラ弱毒株であるLon欠損株を腹腔から投与すると、分泌タンパク質SiiE依存的に骨髄IgG分泌プラズマ細胞維持を抑制し宿主獲得免疫応答から回避することで、脾臓内細胞で長期間生存するという分子機構を明らかとした。本年度は、サルモネラLon欠損株を腹腔感染させたマウスにおいて感染臓器内のミエロイド細胞を解析し、サルモネラが局在する細胞とその伝播について解析した。その結果、サルモネラ非投与マウスと比較して、サルモネラ持続感染マウスの脾臓では、未成熟マクロファージが感染7日で増加し21日目まで同程度維持された。投与部位である腹腔では未成熟マクロファージが増加したが、腹腔特異的マクロファージが7日目、21日目まで完全に消失した。そこで、腹腔特異的マクロファージ変遷を調べたところ、感染6時間で顕著に減少し、24時間ではほとんど検出されなかった。強毒株及び非病原性株感染実験から、腹腔特異的マクロファージは感染初期のサルモネラの伝播に関与することが示唆された。腹腔に投与されたサルモネラは、腹腔特異的マクロファージに貪食されることで組織リンパ節に移行し、その後リンパ節に集積した未成熟マクロファージに貪食され各臓器に維持されるが、細胞内のサルモネラは病原因子を分泌し獲得免疫機構を抑制すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
持続感染するサルモネラ弱毒株が臓器内で局在するミエロイド細胞について解析を進めることができた。従来、サルモネラ全身感染を調べる方法として腹腔内感染が用いられているが、これまで腹腔特異的マクロファージの機能について解析した報告はなく、今回、サルモネラ腹腔感染時の伝播に関与することを新たに見出すことができた。 また、骨髄記憶免疫細胞の維持等に関わるストローマ細胞の遺伝子発現解析も共同研究者と共に進めることができ、宿主側の解析についても順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1.サルモネラ感染における腹腔特異的マクロファージ動態について詳細に調べる。Lon欠損株は病原因子を過剰に分泌する株である。そこで、これらの病原因子とマクロファージ動態の特徴を明らかにするため、病原因子発現を変化させた変異株等を用いて検討する。様々な持続感染株での結果を比較することで、サルモネラが感染するミエロイド細胞の特徴について明らかにする。 又、感染後期ではB細胞にも局在することから、サルモネラとB細胞の相互作用についても検討する。B細胞を分類し、サルモネラが局在するB細胞の特徴を明らかにし、B細胞内でのサルモネラの増殖などについて調べる。 2.サルモネラ感染時の骨髄Bリンパ球が顕著に減少することを明らかにしている。この制御機構として、B細胞の分化に関わるストローマ細胞から産生されるケモカインCXCL12の発現が抑制されることを示す結果を見出している。そこで分子機構を明らかにするため、非感染マウス及びサルモネラ感染マウスの骨髄からストローマ細胞を分画し、サルモネラ感染時に抑制される遺伝子を調べる。発現が変化した遺伝子を同定し、B細胞分化への関与について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験順調に進み、多くの結果を得られたため、技術補佐員を雇用した。実験計画の一部を入れ替え、動物実験、遺伝子発現解析実験の予定を見直した。これらの実験を次年度に繰り越したため、その予算を次年度に持ち越した。
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