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2019 年度 実施状況報告書

細菌感染治療の分子基盤を自然免疫機構と化学療法の協調的相互作用から理解する試み

研究課題

研究課題/領域番号 18K07106
研究機関金沢大学

研究代表者

土屋 晃介  金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (50437216)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードinflammasome / pyroptosis / Listeria / AIM2 / パイロトーシス / リステリア / 細菌感染治療 / 抗生物質
研究実績の概要

前年までに、リステリア感染のアンピシリン治療モデルにおけるインフラマソームによる菌排除の亢進がパイロトーシス(計画的ネクローシス)実行因子であるgasdermin D (GSDMD)に依存することを明らかにしていた。今年度、研究を進めることでGSDMD以外にもインフラマソーム-カスパーゼ-1経路の下流で細胞死の誘導に関わるシグナル伝達経路が 存在することが明らかになった。インフラマソーム-カスパーゼ-1経路がGSDMDの非存在下においてアポトーシスを誘導することがわかり、そのシグナル伝達分子としてカスパーゼ-1基質であるBidおよびカスパーゼ-7を同定した。また、Bidがこのアポトーシス誘導でより主要な役割を果たすこと、カスパーゼ-1によって切断されることで活性化し、ミトコンドリア経路を介してアポトーシスを誘導することが示唆された。リステリア感染に対するアンピシリン治療効果は、GSDMDと比べてASCやカスパーゼ-1に強く依存しているため、今年度に同定されたBidおよびカスパーゼ-7などのアポトーシスのシグナル伝達分子がGSDMD非存在下で働いている可能性が想定される。また、リステリアを感染させたASC欠損マクロファージをアンピシリン処理すると、菌がLAMP-1陽性の小胞内に局在することが明らかになった。アンピシリンは主に増殖中の菌に作用するため、このような膜構造内でリステリアの増殖が制限され、その結果としてアンピシリンに長時間耐える可能性が示唆された。また、リステリアを内包するLAMP-1陽性小胞は、野生型マクロファージと比べてASC欠損マクロファージで有意に増加していたため、インフラマソーム-カスパーゼ-1経路がこの膜構造の傷害または形成阻害に働くことが考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

インフラマソーム-カスパーゼ-1経路の下流においてGSDMD非依存的にアポトーシスを誘導するシグナル伝達経路が存在することを明らかにし、その分子機序を特定した。また、アンピシリン処理時、リステリアが局在するオルガネラ(LAMP-1陽性小胞)を特定した。インフラマソーム-カスパーゼ-1経路が菌排除を亢進する現象の実態解明に向けて大きく前進した。

今後の研究の推進方策

GSDMDに加えてBidもインフラマソーム-カスパーゼ-1経路の下流で細胞死に関わることが明らかになったため、今後、アンピシリン処理時の菌排除におけるBidの役割も検討する。この目的のためにGSDMD/Bid二重欠損マウスを作製する。アンピシリン処理時にリステリアがLAMP-1陽性小胞内に局在することから、この膜構造が菌のアンピシリン耐性に関わるか検証する。また、細胞死シグナル伝達分子であるGSDMDおよびBidがLAMP-1陽性小胞に与える影響を調べる。

次年度使用額が生じた理由

研究の過程において、インフラマソーム-カスパーゼ-1経路による細胞死誘導のGSDMD非依存的経路を発見した。この発見自体がハイインパクトジャーナルへの掲載に値すると判断したため、単独で論文発表することを優先して本研究課題で行う予定だった実験を後回しにした。以上のような理由から次年度使用額が生じた。ただし、この発見およびその過程で作製した実験ツールが本研究課題にも活かせるため、総合的観点からは本研究課題は前進していると判断できる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] 西南大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      西南大学
  • [雑誌論文] Caspase-7 mediates caspase-1-induced apoptosis independently of Bid.2020

    • 著者名/発表者名
      Mahib M.R., Hosojima S., Kushiyama H., Kinoshita T., Shiroishi T., Suda T.*, Tsuchiya K.
    • 雑誌名

      Microbiology and Immunology

      巻: 64 ページ: 143-152

    • DOI

      doi: 10.1111/1348-0421.12756.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inflammasome-associated Cell Death: Pyroptosis, Apoptosis, and Physiological Implications.2020

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya K.
    • 雑誌名

      Microbiology and Immunology

      巻: In press ページ: In press

    • DOI

      doi: 10.1111/1348-0421.12771.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Caspase-1 initiates apoptosis in the absence of gasdermin D.2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya K., Nakajima S., Hosojima S., Thi Nguyen D., Hattori T., Manh Le T., Hori O., Mahib M.R., Yamaguchi Y., Miura M., Kinoshita T., Kushiyama H., Sakurai M., Shiroishi T., Suda T.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 10 ページ: 2091

    • DOI

      doi: 10.1038/s41467-019-09753-2.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ASC and NLRP3 maintain innate immune homeostasis in the airway through an inflammasome-independent mechanism.2019

    • 著者名/発表者名
      Fang R., Uchiyama R., Sakai S., Hara H., Tsutsui H., Suda T., Mitsuyama M., Kawamura I., Tsuchiya K.
    • 雑誌名

      Mucosal Immunology

      巻: 12 ページ: 1092-1103

    • DOI

      doi: 10.1038/s41385-019-0181-1.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Pyroptosis enhances antibiotic therapy of listeriosis.2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya K, Suda T.
    • 学会等名
      第92回日本細菌学会総会
  • [学会発表] Caspase-1 initiates apoptosis in the absence of gasdermin D.2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya K, Mahib MR, Suda T.
    • 学会等名
      The 17th International Congress of Immunology (IUIS2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Gasdermin D (GSDMD) mediates IL-1α maturation during inflammasome formation.2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya K, Suda T.
    • 学会等名
      第 48 回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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