研究課題
細菌の運動器官であるべん毛は、自分自身の構造体を構築するためにIII型分泌系に属するタンパク質輸送装置を持っている。III型分泌系は、病原性に働くIII型分泌装置としてよく知られている。べん毛輸送装置は、5種類の膜タンパク質からなる輸送ゲートと、3種類の細胞質タンパク質からなるATPase複合体で構成されている。構成タンパク質は、細胞外へと分泌され、細胞膜に近い方から順にロッド、フック、ジャンクション、フィラメントという線維構造を構築する。しかしながら、基質であるべん毛線維構成タンパク質が、どのような経路によってべん毛輸送装置を通って膜透過されるのか、十分に理解されていない。そこで、基質タンパク質の膜透過過程をin vitro再構成実験系によって明らかにする。そのために、べん毛輸送装置と基質タンパク質の間に部位特異的光架橋法によって架橋形成させ、べん毛タンパク質がどのような経路を経て、細胞外へと膜透過されるのか明らかにする。本年度の研究では、反転膜小胞を用いたin vitro輸送再構成系によって、べん毛線維の大部分を構築するフィラメントタンパク質、べん毛線維の構築を補助するフィラメントキャップタンパク質、フィラメントとフックの間をつなぐジャンクションタンパク質の輸送に必要なエネルギー共役システムについて研究した。また、べん毛線維のin vitro再構成系を用いた構築の再現について更なる研究を進めた。輸送装置はMSリングの内側に構築される。そのためMSリングの構築過程についても研究した。ビブリオ属菌のMSリングの形成には、Cリングタンパク質FliGを必要とすることを明らかにした。さらに、回転力発生のために必要な固定子回転子間相互作用について、光架橋を用いて解析し、相互作用の実態について明らかにした。
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Journal of Bacteriology
巻: 203 ページ: e00016-21
10.1128/JB.00016-21
Journal of Bacteriology.
巻: 202 ページ: e00236-20
10.1128/JB.00236-20