研究課題
細菌性コラゲナーゼは、触媒モジュールとアンカー・モジュールよりなる。生理活性物質を本アンカー・モジュールと融合してコラーゲン基剤や組織膠原線維に結合させ、組織修復能を局所で長期間発揮させ骨新生を誘導できた。これらを背景とし、本研究課題の実績は、1) 複数のドメインよりなるアンカー・モジュールがどのように膠原線維に結合するかを明らかにした。2) 歯科領域で歯周病による歯槽骨欠損の治療に展開した。3) 整形・形成外科領域で神経欠損の治療に展開したことである。1) アンカー・モジュールと不溶性線維の結合様式を明らかにするため、Clostridium histolyticum ColG酵素由来のアンカー・モジュール(ドメイン構造PKD-CBD1-CBD2)とコラーゲン様ペプチドの複合体の構造をX線小角散乱法により決定した。CBD2はペプチドのC末端に結合していた。また、CBD1は別のコラーゲン分子に結合し、PKDはC末端より下流に触媒モジュールを配置することを示す結果が得られた。2) 歯周病による歯槽骨の水平欠損に対する本複合剤の有用性をラット・モデルにより検討した。コラーゲン結合性線維芽細胞増殖因子(CB-bFGF)固相化コラーゲンを欠損部に充填することで、有意な骨形成を誘導できることを明らかにした。オステオカルシン、proliferating cell nuclear antigen、オステオポンチン陽性細胞が増加することを示した。生体内でのCB-bFGFの薬物動態と治療効果を明らかにするため、イヌを用いた前臨床研究を実施し、大動物でも同様の結果が得られることを示した。3) 生分解性の高いポリグリコール酸外鞘の内腔にコラーゲンが充填された医療機器に着目し、外鞘の透過性を利用して内腔のコラーゲンにCB-bFGFをアンカリングし、坐骨神経欠損モデルを用いて、神経再生が有意に促進されることを組織学的、行動学的に明らかにした。
2020年度は、共同研究先のアーカンソー大学および北里大学に計3名の学生を派遣する予定であったが、COVID-19蔓延のため中止せざるを得なかった。学内での研究に重点を移し、新たな生理活性を示す物質をアンカー・モジュールと連結して、in vitroでの生理活性とアンカリング活性が保持されていることを確認した。2021年度以降in vivoモデルを用いた実験に着手すべく倫理審査を申請した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
J Biomed Mater Res B Appl Biomater.
巻: 108 ページ: 326-332
10.1002/jbm.b.34391
http://www.okayama-u.ac.jp/user/saikin/Bacteriology/Welcome.html