研究課題/領域番号 |
18K07114
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
成谷 宏文 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30452668)
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研究分担者 |
玉井 栄治 松山大学, 薬学部, 准教授 (40333512)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Clostridium perfringens / ガス壊疽菌 / シグナル伝達 / プロテインキナーゼ / プロテインホスファターゼ / 細胞壁生合成 / タンパク質相互作用 / Yeast Two-Hybrid Screen |
研究実績の概要 |
グラム陽性病原細菌に普遍的に存在する真核型 Protein Ser/Thr Kinase (K) - Phosphatase (P)シグナル伝達系の機能をClostridiumperfringens (ガス壊疽菌)をモデルとして解明する。我々は既に、K のリン酸化基質タンパク質として Clostridium属細菌に特異的な繰り返しタンパク質相互作用領域 (TPR) を有する膜タンパク質 (S) を同定し、そのThr-92のリン酸化調節で同菌の隔壁形成・分裂・形態(菌長)を制御することを見いだしている。また S が必須酵素: IspG(非メバロン酸経路: 細胞壁生合成に関与)と MurF (D-Ala-D-Ala Ligase:細胞壁生合成経路)との相互作用を見いだしている。 本研究では、タンパク質間の相互作用がいくつも統合された高次ネットワークで行われる菌の『形態形成』における S-IspG-MurF複合体形成 と K-P 制御のメカニズムを明らかにする事を目的とする。具体的には in vivo Cross-Link 法により S 複合体を K・P欠損株より単離し、その構成因子をLC-MS/MS により同定する。またK (二量体) の酸性アミノ酸(Glu/Asp)-Rich 領域の機能として His-Aspリン酸リレー系(Protein His Kinase) の走化性制御で知られる『メチル化Adaptation機構』を念頭に、Glu 変異株の解析、また Glu/Asp-Rich 領域との相互作用因子の同定を行う。本年度は、以下について検討を行った。 1) S の新規相互作用因子の探索 2) 他のClostridium属細菌S ホモログの比較解析/リン酸化部位決定 3) K の酸性アミノ酸領域の機能解析
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)S の新規相互作用因子の探索 Epitope-tag S をゲノム上で発現する変異株を作製し、Formaldehyde Cross-Linking (FACL)、Hisタグ-Pull-Down (PD)解析を行った。しかし、FACLではPsmによる溶菌/可溶化が困難であり、プロトプラストでのFACLでも同様であった。PDでは、HisタグSの発現及び非発現株の菌体をHisタグなしPsmで処理し(0.5 % CHAPS存在下)、菌体ライセートを調製、Ni-IMACにより分画した。SDS-PAGE後、発現株分画に特異的なバンドについてN末端アミノ酸配列の決定を試みたが量/純度等の問題で成功していない。そこで、EGSを用いた in vivo Cross-Link 法で S との複合体を検出すると、リン酸化/非リン酸化 S で 形成される高分子体の大きさ/量に相違が認められる。現在、LC-MS/MS解析に供するため、より純度の高いサンプルの調整について洗浄等の条件検討を行っている。 2)他のClostridium属細菌S ホモログの比較解析/リン酸化部位決定 現在、Clostridium difficile,acetobutylicum,tetani等の菌体ライセートを調整し、Phosho-Thr抗体によるWestern-Blott解析を行っている。また、Phosho-Ser抗体での条件を検討中である。 3) K の酸性アミノ酸領域の機能解析 現在、酸性アミノ酸領域をクローニングし、Yeast Two-Hybrid Screenを行っている。また、酸性アミノ酸領域の欠損体および11 Glu残基を全てGlnに置換した変異体を作製し、その発現の確認を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、 1)S の新規相互作用因子の探索:LC-MS/MS解析を行い、特定された因子の欠損株作製等の遺伝子解析を行う。 2)他のClostridium属細菌S ホモログの比較解析/リン酸化部位決定:リン酸化タンパク質の分画をAffinity-Chromatographyで行い、Phosho-Thr/Ser抗体によるWestern-Blott解析で確認後、LC-MS/MS解析によりリン酸化部位を含めタンパク質の特定を行う。 3)K の酸性アミノ酸領域の機能解析とKのシグナル分子の同定:作製した酸性アミノ酸領域の欠損/変異体の菌形態等の表現型を確認する。シグナル分子の同定については、新規エンドリシン Amidase等 による細胞壁分解物およびD-Ala-D-Alaの添加によるリン酸化シグナル伝達系への影響等を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品と当初購入を予定していた、エレクトロポレーター(PCモジュール)と冷却遠心機のコニカル管用のローターの購入費が少なく済んだため。LC-MS/MS解析の外注費用、ブロックインキュベーターの購入費として充てる。
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