研究課題
ギラン・バレー症候群(GBS)は各種感染症との疫学的な関連が証明された自己免疫性末梢神経疾患である。本研究では、GBSにおける先行感染の重要性を示すため先行感染の原因病原体レベルでGBSの多様性が規定されていることを証明することを目的とする。平成31年度は、フィッシャー症候群(FS)でも先行感染によって臨床像が規定されているか、解析を行った。フィッシャー症候群は外眼筋麻痺と運動失調、腱反射を三主徴とするGBSの臨床亜型である。FS 70例を対象に、先行感染を血中抗体・細菌培養により同定した。ピーク時の神経所見や重症度、入院日数、糖脂質抗体の情報を収集し、さらに血清中ICAM-1濃度を測定した。その結果、インフルエンザ桿菌感染後FSは、眼筋麻痺以外の脳神経麻痺や四肢筋力低下、意識障害は稀で、ピーク時に重症化する症例は約半数にとどまった。カンピロバクター感染後FSは、FSの三主徴の全てを呈することは稀で、最終診断は60%の症例がFS不全型(急性外眼筋麻痺±運動失調)であった。重症化する症例は半数であった。羞明を初発症状とする症例が3割でみられた。サイロメガロウイルス(CMV)感染後FSは、球麻痺や四肢での他覚的感覚障害が高頻度であった。全例で免疫治療が施行されているにも関わらず重症化しやすく、入院期間が長い傾向を示した。先行感染により糖脂質抗体のパターンに差はなかったが、糖脂質抗体のIgGサブクラスは、CMV感染後FSではIgG3優位で、他はIgG1優位であった。血清中可溶性ICAM-1濃度は先行感染により血中ICAM-1濃度に差はみられなかった。以上より、GBSと同様にFSにおいても、先行感染と臨床像とが密接に関連することが明らかとなった。特にCMV感染後FSでは、球麻痺や四肢感覚障害をきたし重症化しやすい。GBS発症における先行感染の重要性の普遍性が示された。
1: 当初の計画以上に進展している
ギラン・バレー症候群の臨床亜型であるフィッシャー症候群で、先行感染と臨床像とが密接に関連することを示しただけでなく、先行感染を同定することの臨床的な意義を明らかにできたため。
平成30年度の研究において我々が見い出した四肢遠位部限局型ギラン・バレー症候群(DL-GBS)の発症を規定する先行感染因子を同定することを目的として、令和2年度は解析を行う。この臨床亜型では、自己抗体としてIgG抗GM1抗体が検出され、またほぼ例外なくカンピロバクター・ジェジュニが先行感染であることが明らかとなっているため、DL-GBS患者の糞便から分離されたカンピロバクター・ジェジュニの菌株を分析し、GM1エピトープを菌体リポオリゴ糖上に発現していることを明らかにする。つまり、先行感染レベルで自己抗体の反応性が決定され、結果的に筋力低下の分布が規定されていることを強く示唆する所見であり、本研究の作業仮設である「先行感染の原因病原体レベルでGBSの多様性が規定されている」ことを示す結果となる。これら一連の研究結果を取りまとめて、成果の発表を行う。
計画的に使用したが、端数の残金が生じたため。次年度以降に物品費などで使用予定である。
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