ギラン・バレー症候群(GBS)は各種感染症との疫学的な関連が証明された自己免疫性末梢神経疾患である。本研究では、GBSにおける先行感染の重要性を示すため、先行感染の原因病原体レベルでGBSの多様性が規定されていることを証明することを目的とする。 GBSの臨床亜型として、四肢遠位部限局型ギラン・バレー症候群(DL-GBS)をわれわれは見出し提唱してきた。この臨床亜型でみられる自己抗体は、IgG抗GM1抗体が陽性かつIgG抗GM1抗体が陰性というパターンであり、また、原因先行感染病原体はほぼ例外なくカンピロバクター・ジェジュニという特徴がある。これらの特徴から、DL-GBSの原因となるカンピロバクターに発現するガングリオシドエピトープは、典型的なGBSを引き起こすカンピロバクターとは異なるパターンを示すことが予想される。本研究では、DL-GBS を引き起こす菌株にはGD1aエピトープを欠きGM1エピトープのみが発現しているとの作業仮説をたてて検証した。DL-GBS患者の糞便から実際に分離培養されたカンピロバクター・ジェジュニ2株のリポオリゴ糖を分析した結果、GM1エピトープだけでなくGD1aエピトープも菌体上に発現しており、GBSの分離株で最も多くみられるガングリオシドエピトープのパターンを示した。これは、DL-GBSを引き起こすカンピロバクター上にGD1aエピトープを遮蔽する分子が特異的に発現していることが示唆する結果であり、今後、遮蔽する分子の同定が期待される。
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