腸管出血性大腸菌(EHEC)のO145:H28菌株について、①F株のプロファージゲノム内に挿入された志賀毒素(Stx2)ファージと②S株のStxファージゲノム内に挿入されたラムダ型サテライト様ファージ、に関する機能解析の成果を以下に記載する。 ①F株およびF株と同一のStx2ファージ溶原化パターンを示すE株について、それぞれのファージ粒子が溶原化したK-12株を単離した。ファージにコードされるStx2の発現はファージ誘導に密接に関連している。F株のStx2ファージが溶原化したK-12株は高Stx2産生性を示したことから、F株のプロファージゲノム内に挿入されたStxファージの誘導能が高いことが示唆された。また、E株は互いに異なる塩基配列を含む2つのStx2ファージを保有しており、それらのファージが溶原化したK-12株のStx2産生性は著しく異なっていた。従って、ファージ間で配列が異なる領域がStx2産生性に関与していることが示唆された。 上記に加え、前年度までに得た知見をまとめた研究論文をPLoS Pathogens誌に投稿し、受理された(in press)。 ②前年度に、サテライトファージとヘルパーファージが溶原化したK-12株を単離した。この菌株から誘導されるファージ粒子の形態解析から、サテライトファージとヘルパーファージの頭部の大きさに差が無いことを示唆する結果を得た。ヘルパーファージ溶原株を作製して比較解析を行った。ヘルパー/サテライトファージ溶原株は、ヘルパー溶原株に比べ、迅速に溶菌が起きることが明らかとなった。また、ヘルパー/サテライトファージ溶原株から誘導される感染性のヘルパーファージ粒子数は、ヘルパー溶原株から誘導されるものよりも著しく減少していた。これらの結果は、サテライトファージの存在がヘルパーファージのファージ誘導・粒子形成能に影響を与えていることを示唆する。
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