研究課題/領域番号 |
18K07120
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
多田 達哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00624644)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高度多剤耐性アシネトバクター / 染色体 / インテグレート / 外来薬剤耐性遺伝子 |
研究実績の概要 |
高度多剤耐性アシネトバクター属菌が日本や東南アジアの医療施設で新興し、感染症治療および院内感染対策上の大きな脅威となっている。我々は日本、ベトナムおよびネパールの医療施設から分離された多剤耐性アシネトバクター属菌の分子疫学解析および全ゲノム解析を実施してきた。その結果、これらの国々で分離される多くのアシネトバクター属菌はアミノグリコシド系薬に対して高度耐性を付与する16S rRNAメチラーゼを産生していること、その分離頻度が2012年から2015年にかけて優位に増加していることを明らかにしてきた。完全長ゲノム解析の結果、アシネトバクター属菌の多くはこの16S rRNAメチラーゼ遺伝子がプラスミドではなく染色体にインテグレートされていることが明らかとなった。本研究の目的はアジア諸国で分離された多剤耐性アシネトバクター属菌特有の外来薬剤耐性遺伝子インテグレート機構を解明することである。 完全長ゲノム決定した3株のアミノグリコシド高度耐性MDRAおよび次世代シーケンサMiSeqで全ゲノム配列を決定しているアミノグリコシド高度耐性MDRA 250株(日本50株、ベトナム100株およびネパール100株)の配列情報を用いて、完全長ゲノムがわかっている感受性臨床分離株および環境由来株と比較し、アミノグリコシド高度耐性MDRAに固有に持っている遺伝子(群)の特定を試みた。本年度は前年度に絞り込んだ9遺伝子(OrfA~OrfI)から特定のプロファージをコードする遺伝子をターゲットにし、この遺伝子をベクターに組み込み、アミノグリコシド感受性アシネトバクターに形質転換した後、高度アミノグリコシド耐性アシネトバクターと共に培養した結果、感受性株がアミノグリコシド耐性を獲得することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年2月までは比較的順調に進展していたが、3月以降、新型コロナウイルスの影響により試薬の購入および研究室の入出規制があり、やや遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特定したプロファージをコードする遺伝子が他の遺伝子と菌体内でどのように相互作用しているかを検証するため、特定した遺伝子を感受性株の染色体に発現させた遺伝子改変アシネトバクター・バウマニー株を作製し、遺伝子改変株と感受性株それぞれに上記シャトルベクターをトランスフォームする。一定時間経過後に両株からRNA を抽出し、RNA-seq を利用した網羅的発現解析を行うことで関連タンパク質を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で購入を予定していた試薬が手に入らなかったため。
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