研究課題/領域番号 |
18K07128
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高橋 美帆 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00446569)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 志賀毒素 / ペプチドアレイ / プロテインキナーゼ |
研究実績の概要 |
腸管出血性大腸菌感染症の主要な病原因子Shiga toxin (Stx)には、Stx1とStx2の2つのファミリーが存在する。両者は同程度の細胞障害活性を有するが、マウスを用いた検討ではStx2の方が強毒性を示すことが知られている。これまでに我々は、Stxが細胞内に取り込まれた後、Stx1と比較してStx2がより積極的に細胞外へ放出されること、放出されたStx2の一部はエクソソーム結合型(exo-Stx2)となっていること、exo-Stx2が個体レベルでの強毒性に関与することを見出している。本年度は、Stx2特異的な細胞内輸送ならびにexo-Stx2の産生に必須の働きをする分子を同定するために、タンパク質キナーゼに着目しStx細胞内輸送に影響を与えるキナーゼの探索を行った。昨年に引き続き、セリンスレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼの基質ペプチドがスライドグラス上にスポットされたペプチドアレイを作成した。今回は、約130種類のセリンスレオニンキナーゼの基質ペプチド計670種類と、約60種類のチロシンキナーゼの基質ペプチド計290種類を用いた。Stx感受性ベロ細胞にStx1あるいはStx2を添加し、37度30分培養後、細胞溶解液をスライドグラスに添加し、リン酸化ペプチドをPhos-tag-biotinおよびstreptavidin-HRPで検出した。その結果、Stx2と比較してStx1でより強く活性化されているセリンスレオニンキナーゼ17種類、チロシンキナーゼ12種類、Stx1と比較してStx2でより強く活性化されているセリンスレオニンキナーゼ17種類、チロシンキナーゼ2種類が、各々同定された。本結果から、Stx1とStx2の場合とでは細胞内で活性化されるキナーゼ群のパターンに違いがあることが示唆された。現在、候補キナーゼについて各Stx細胞内輸送への影響を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、1)Stx2特異的な細胞内輸送ならびにexo-Stx2の産生に必須な働きをしている分子群の同定、2)exo-Stx2産生を効率よく阻害する化合物を同定、3)マウスモデルにおける候補化合物の有効性の評価、を計画している。ペプチドアレイの作成にあたり、各基質ペプチドを高純度で合成すること、各ペプチドの品質維持、等が想定以上に困難であり、その影響で高品質のペプチドアレイを作製することに時間を要した。このため進度がやや遅れている。現在、候補分子が同定され次第、2)を遂行できるよう化合物は準備されており、1)と2)を並行して遂行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の1)Stx2特異的な細胞内輸送ならびにexo-Stx2の産生に必須な働きをしている分子群の同定、2)exo-Stx2産生を効率よく阻害する化合物を同定、については、新たな候補分子が同定されれば、随時、阻害化合物の効果を検討する。 3)マウスモデルにおける候補化合物の有効性の評価については、すでに実験系を確立していることから、2)で化合物が同定され次第、速やかに3)に着手する予定である。
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