研究課題
腸管出血性大腸菌感染症の主要な病原因子Shiga toxin (Stx)には、Stx1とStx2の2つのファミリーが存在する。両者は同程度の細胞障害活性を有するが、マウスを用いた検討では、Stx1と比べてStx2が数百倍強毒性を示すことが知られている。これまでに我々は、Stxが細胞内に取り込まれた後、Stx1と比較してStx2がより積極的に細胞外へ放出されること、放出されたStx2の一部はエキソソーム結合型(exo-Stx2)となっていること、exo-Stx2が個体レベルでの強毒性に関与することを見出している。本年度は、Stx2特異的な細胞内輸送に必須の働きをする分子を同定するために、タンパク質キナーゼに着目しStx細胞内輸送に影響を与えるキナーゼの探索を行った。これまでに、セリンスレオニンキナーゼおよびチロシンキナーゼの基質ペプチドが数百種類スポットされたスライドグラスを用いて、Stx刺激により活性化されるキナーゼの探索を行っており、Stx2刺激で選択的に活性化されるキナーゼを複数種類同定した。そこで、候補となる各種キナーゼ阻害剤をVero細胞に添加し、一定時間後細胞外へ放出さるI-125標識Stx2量を測定し、Stx2の細胞内輸送に影響を与えるキナーゼを評価した。20種類の各候補キナーゼ (10 microM)を添加30分後にI-125標識Stx2(1ug/ml)を添加し2時間培養後にメディウム交換し、1時間培養後メディウム交換、その後2時間培養し上清中に放出されるI125-Stx2を回収、γカウンターにより定量した。その結果、12種の阻害剤では、各阻害剤添加により放出Stx2量に有意な差は見られなかったが、2種類の阻害剤では放出Stx2量が増加すること、2種類の阻害剤においては放出Stx2量が低下することが示された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
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Communications biology
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