研究課題/領域番号 |
18K07133
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小倉 康平 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (00586612)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レンサ球菌 / ゲノム解析 / 病原因子 |
研究実績の概要 |
高溶血性レンサ球菌Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis(SDSE)は、蜂窩織炎、菌血症、および重篤な壊死性筋膜炎等の原因菌であり、その症例数は近年急増している。 本研究では、国内で患者から分離されたSDSEを対象として、本菌が示す固有の病原性発揮メカニズムについての解析を進めている。 本年度は、日本国内において症例数・分離数が最も多いタイプ菌株KNZ01株ならびに国内・国外両方で分離頻度が高いタイプ菌株KNZ03株を用いて、分離高頻度SDSE株が有する病原特性を明らかにした。両菌株のゲノムを解析し、系統学解析ならびに病原因子を探索した。走査型顕微鏡による表層構造解析から、ヒト由来血清成分存在下でSDSEがバイオフィルム状表層構造を形成することを初めて見出し、その表層構造形成にはある種のタンパク質(Cell wall anchoring protein)が必須であることを明らかにした。また、ヒト由来血清成分存在下で、両株はそれぞれ異なる増殖・抗貪食能・細胞定着様式を示していた。さらに、両菌株をマウス皮下に感染させた際は、感染後7日にともに感染部に潰瘍を発症させたが、潰瘍形成より前(感染2日目)の菌株の感染部定着は、KNZ01株でのみ観察された。一方、ヒト血液への溶解活性はKNZ03株が有意に高かった。以上のことから、分離高頻度SDSE株は、それぞれ異なる病原因子発揮メカニズムを有することで、ヒトに対して高い病原性を示すことが示された。 また本年度は、これまで分離数が稀であるとされてきた北陸地方一病院からA群SDSEが多く分離されたことから、その分離株が有する遺伝学的特性を解析した。分離されたA群SDSEは、非常に近いゲノム構造を有していた。またベイズ法解析から、A群SDSEは39年前に同一の祖先から分岐したことが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【現在までの進捗状況】に記した研究成果について、国際誌Frontiers in Microbiologyおよび Microbiology and Immunologyに投稿し、ともに本年度中に受理された。本年度は多くの成果を得ることができたと言え、本研究は非常に順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間1-2年目に蓄積した知見を基に、さらに研究を加速させている。現在、SDSE固有の新規病原因子ならびに感染時の菌の生体内挙動について研究を進めている。提出した研究計画書にある通りに研究を遂行していく。
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