研究課題/領域番号 |
18K07134
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松村 和典 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (70537670)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結核菌 / PE_PGRS30 / マクロファージ / PHB2 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
結核は、今なお対策が必要な感染症であり、結核菌の病原性解明が求められているが、細胞間伝播の機序は不明な点が多い。PE_PGRSファミリーは、結核菌タンパク質の10%を占めるPE/ PPEファミリーのサブファミリーで、特定の機能を有する共通ドメイン等は報告されておらず、機能が同定されているタンパク質も少ない。我々は、結核菌タンパク質PE_PGRS30をマクロファージ様細胞株RAW264.7に発現させると、アポトーシスが誘導されることを見出した。PE_PGRS30は、遺伝子発現やミトコンドリア維持に関与するプロヒビチン2(PHB2)と相互作用していた。 PE_PGRS30は、3ドメイン(PE、PGRS、CT)に分かれる。当該年度は、まず各ドメインをRAW264.7に発現させるプラスミドを作製した。PE_PGRS30の全長を発現させた結果と比較し、アポトーシス誘導に必要なPE_PGRS30の領域を同定する予定である。また、PE_PGRS30の全長及びドメイン別の組換えタンパク質を発現する大腸菌を作製した。精製したタンパク質をRAW264.7の培養上清に添加し、アポトーシスを誘導するか、また、どの領域が誘導するかをタンパク質レベルで確認する予定である。さらに、結核菌は培養に2週間程度かかるため、大腸菌を用いれば2日で済む形質転換が、結核菌だと1ヶ月を要する。そこで、結核菌の近縁種で培養日数が2日程度と短く、PE_PGRS30を発現していないMycobacterium smegmatisにPE_PGRS30の全長及び各ドメインを発現する株を作製した。このPE_PGRS30発現M. smegmatisをRAW264.7に感染させ、アポトーシスを誘導するか、どの領域が誘導するかを菌体レベルで確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、結核菌タンパク質PE_PGRS30のアポトーシス誘導領域を同定するため、マクロファージ内でのタンパク質発現、精製タンパク質のマクロファージへの添加、発現菌体のマクロファージへの感染という各レベルでの検討を試みたが、それぞれの検討に必要な準備に時間を要した。また、RAW264.7の化学的手法によるトランスフェクション効率が低いことから、検討に時間がかかるため、レトロウイルスを用いたトランスフェクションに移行することで、時間短縮を狙った。コントロールであるGFPの発現効率の改善は確認できたが、PE_PGRS30の発現が確認できなかったため、この系を用いるのは困難であることが判明した。さらに、大腸菌から組換えタンパク質を精製する際に、マクロファージを活性化し細胞死を誘導するエンドトキシンが混入することがわかり、PE_PGRS30の作用と混同しないため、精製時にエンドトキシンを除去する方法の検討とその確認が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
・アポトーシス誘導に必須なPE_PGRS30の領域同定 PE_PGRS30の3つのドメインを、それぞれマクロファージに発現させ、全長を発現させた結果と比較し、PE_PGRS30のアポトーシス誘導ドメインを同定する。 ・組換えPE_PGRS30添加によるアポトーシス誘導 組換えPE_PGRS30の全長及び各ドメインタンパク質をマクロファージに添加し、アポトーシスの誘導とそれに必須な領域を確認する。細胞内に取り込まれない場合は、ウイルスペプチドのTATをN末端に融合させる。 ・PE_PGRS30発現菌体感染によるアポトーシス誘導 PE_PGRS30を発現する近縁菌M. smegmatisをマクロファージに感染させ、野生株と比較してアポトーシスが誘導されるか検討する。 ・結核菌から分泌されたPE_PGRS30の感染細胞内局在 PE_PGRS30は、結核菌から分泌されることが確認できている。結核菌をマクロファージに感染させて免疫染色によりPE_PGRS30の検出を試み、分泌されたPE_PGRS30の感染細胞内局在を明らかにする。PHB2と共局在しているかどうか、PHB2が核またはミトコンドリアに局在するかどうかも検討し、PE_PGRS30を発現させた結果と整合性がとれるか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延に伴う緊急事態宣言により、実験の進行に遅れが生じ、延長を申請した。使用計画としては、ほぼ「物品費」として使用する予定で、「旅費」は学会等が当該年度のようにオンラインで開催されれば、必要ないので0円、人件費・謝金は0円、残りを「その他」として使用する。
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