研究課題/領域番号 |
18K07136
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
南保 明日香 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 教授 (60359487)
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研究分担者 |
津田 祥美 北海道大学, 医学研究院, 講師 (70447051)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エボラウイルス / リン脂質 / 小胞輸送 / ウイルス粒子形成 / ホスファチジルセリン |
研究実績の概要 |
リン脂質の1つであるホスファチジルセリン(PS)に対する受容体がエボラウイルスの侵入に関与するという報告から、エンベロープ外膜に集積するPS依存的な侵入機構の存在が示唆されている。エボラウイルスは形質膜から出芽する際にエンベロープを獲得する。PSは正常細胞の形質膜において内膜に局在することから、感染細胞において、何らかの機構によりPSがウイルスエンベロープ外膜に集積することが予想される。これまで、このプロセスに関与する宿主因子としてXkr8を同定し、Xkr8がウイルス糖タンパク質と共に形質膜へと小胞輸送された後にウイルス粒子に取り込まれ、PS集積に貢献する可能性を示した。本研究においては、さらに詳細なPS集積機構を分子レベルで解明することを目的とする。現在までに、PSと特異的に結合するAnnexin Vをプローブとした凍結割断レプリカ法によりエボラウイルス様粒子へのPS集積を証明することに成功した。また、ウイルス粒子形成における小胞輸送の役割について検討した結果、ウイルス粒子形成の際に、リサイクリング小胞の形質膜への膜輸送が促進すること、またリサイクリング小胞の形成を阻害することで、ウイルス粒子形成が阻害されることを証明した。さらに、組み換えエボラウイルス並びに野生型エボラウイルス感染細胞において、リサイクリング小胞の形質膜への膜輸送が誘導されることを確認した。以上の結果から、ウイルス粒子形成の際に、感染細胞の小胞輸送が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、研究協力者である藤田秋一博士(鹿児島大学)との連携により、PSと特異的に結合するAnnexin Vをプローブとした凍結割断レプリカ法によりエボラウイルス様粒子へのPS集積を証明することに成功した。また、エボラウイルス様粒子が形成される際に、リサイクリング小胞の形質膜への輸送が促進すること、またリサイクリング小胞の形成を阻害すことで、ウイルス様粒子形成が阻害されることを証明した。さらに、研究協力者である河岡義裕博士(東京大学)、研究分担者である津田祥美博士(北海道大学)との連携により、組み換えエボラウイルス並びに野生型エボラウイルス感染細胞において、リサイクリング小胞の形質膜への輸送が促進することを証明した。さらに、研究協力者である高田礼人博士(北海道大学)との連携により、small GTPaseであるRab11の発現抑制によりリサイクリング小胞の形成を阻害した細胞の形質膜でのウイルス粒子形成が抑制することを、走査型電子顕微鏡を用いて証明した。以上の解析結果から、ウイルス粒子形成過程における小胞輸送の関与が示唆されており概ね順調に進展している。今後は、輸送小胞が形質膜に到達するまでの脂質二重層のPS分布の変動に着目し、エンベロープ外膜へのPS集積への関与について検討を行うと共に、この機構に関わる分子機構の解明を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ウイルス様粒子形成に関与するリサイクリング小胞輸送以外の生体膜輸送経路の同定を試みている。今後は、これらの膜輸送プロセスにおける、小胞膜のPS分布の変動を追跡する。また、各種小胞輸送でのPS分布変動に関わる既知の因子に焦点を当て、エボラウイルスエンベロープ外膜へのPS集積メカニズムの同定を試みる。これと並行して、リサイクリング小胞輸送依存的なウイルス様粒子形成機構の解明を目指し、Rab11の機能に着目して解析を進める。最終的に組み換えエボラウイルス並びに野生型エボラウイルス感染細胞の系を用いて、上記の解析結果から得られた知見を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の津田祥美博士(北海道大学)が米国での実験遂行のため、旅費として計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、渡航予定が遅延したため、次年度使用額が生じた。残額分は次年度の米国渡航の際に旅費として使用する。
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