研究課題
インフルエンザウイルスゲノムの細胞膜への輸送に協調して、細胞膜上に点在するウイルス膜タンパク質が脂質ラフトへ集積し、ウイルス粒子形成場(budozone)が形成される。これにより、ウイルスゲノムが無い“空”のウイルス粒子の産生を抑えることができ、また、ウイルス膜タンパク質が高度に充填された“良質”なウイルス粒子を形成することができる。本研究では、(1)小胞輸送系を介したbudozone形成の制御機構、及び(2)ウイルス粒子の“質”保証が必要となる生存戦略上の意義について明らかにすることを目的とする。これまでにbudozone形成に細胞内シグナル伝達物質であるPIP2が関与することを明らかにしている。令和3年度では、PIP2によるbudozone形成促進機構を解析し、アクチン重合を制御するARHGAP1を介して、budozone形成が制御されていることをFRAP解析により明らかにした。また、リサイクリングエンドソームを機能阻害することで、ウイルス膜タンパク質の濃度が低い、低質なウイルス粒子が形成されることを見出している。そこで、そのような低質なウイルス粒子をホルマリンで不活化し、マウスに免疫したところ、コントロールよりも強い抗体応答を誘導した。従って、効率的にbudozoneを形成し、良質なウイルス粒子を形成することは、ウイルスが免疫応答から回避するのに必須であることが示唆された。これらのウイルス粒子を電子顕微鏡観察も行っており、ウイルス膜タンパク質であるHAの発現量が低下していることも確認されている。これらの研究成果をとりまとめ、mBio誌に論文が採択されている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
mBio
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Journal of Biological Chemistry
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