小児や免疫不全患者では長期に渡り体内にウイルスが持続するため、耐性ウイルスの出現が問題となっている。インフルエンザウイルスを接種したヌードマウスでは免疫機能が正常ではないため、一定の条件下ではマウスは死亡せずウイルスは持続感染する。このヌードマウスを免疫不全患者のモデルとし、耐性の出現しにくいポリメラーゼ阻害剤を投与すること、さらに、近年抗インフルエンザ効果が数多く報告されている「抗体」を治療薬として用いることで新たな治療法の確立を試みる。これらの併用により、これまで不可能であった免疫不全個体から完全にウイルスを排除する治療法の確立が期待される。 本年度は、ヌードマウスに致死量のマウス馴化 A/Califoronia/04/2009(H1N1pdm)株を接種し、ファビピラビルは毎日28日間継続、抗体CR9114は、マウス体内での半減期を考慮し、3日に1回2週間程度継続して投与した。その後、毎日症状の観察、体重測定を行い、治療効果を評価した。28日間経過後は投与を中止し、継続して観察を行った。その結果、ファビピラビル投与群は、投与を中止すると早い段階で死亡する個体が出始めた。また、抗体CR9114単剤及びファビピラビルとの併用を行った群では比較的長期間マウスは生残したものの、最終的にはすべてのマウスが死亡した。
|